実際に書いてみて気をつける表現

 

1 いくつかの程度によって表現がことなるもの

 

2  原則として使わないよう注意する表現

 

  1. 〜している
  2. 日本語の現在進行形や様子状態を表す表現であるが、特に「結果」においては原則使用しない。これは英文表記でも同様である。
    「圧力が高くなっている。」→「圧力が高くなった。」
    「図中の太線で描かれているデータ」→「図中の太線で描いたデータ」
  3. 見る、見た、見ていく
  4. 口語的であると共に、「見ていく」は狭くとれば単に見ているだけである。より固い表現かつ具体的な表現が良い。
    「観察する」、「測定する」、「計測する」、「検討する」など
  5. 図○を見ると
  6. 例えば、「図○を見ると、300℃において吸熱ピークがある。」であれば,「図○において、300℃において吸熱ピークが観察された。」でよい。「図○を見ると」は文章では不要である。
  7. 〜が分かる。
  8. 口語的であることに加えて動作の主体が不明であり、誰にでも分かるなら、わざわざ「分かる」と書かなくて良いし、一部の人にしか分からないなら論文に記述する価値はない。例えば「高温であることが分かる」は、単に「高温である」にすれば良い。
  9. 思われる。
  10. 本来は「考えられる」の誤用と考えられるが、近年ではこれを許容する学術誌も存在する。意味上の主語は著者だけでなく一般的な読者も含まれ、「考えられる」は客観的に解釈されるという意味である。「思う(思われる)」の主語は主観的な表現で、本来の意味上の主語は著者にしかなく、テクニカル ライティングの本質を見失っている。また、これに相当する英文表記もない。
    また「考えられる」も使用には慎重になり、更に具体的な表現ができないか検討する。
  11. 完全に〜である。全く〜ない。
  12. 「完全に〜である」は100.0%、「全く〜ない」は0.0%の状態を示しており、自然現象の世界でそれを表現できるのはかなり限定的である。「完全に」、「全く」の使用はかなり慎重になり、必要でなければ削るようにする。(実験結果を扱うなら、まず使わない)
    「完全に水素化反応は終わった。」→「水素化反応は十分に進行した。」「水素化反応はほぼ完了した。」
    「Cr添加量が10mol%以下では、第2相は全く観察されなかった」→「〜、第2相は観察されなかった。」
  13. 〜を○○することができる。
  14. まどろこしい表現で、いささか口語的である。「ことができる」は可能性に言及している場合、能力に言及している場合を除いて避けるほうがよい。
    「x=0〜15の条件では、明瞭なプラトーを観察することができる。」→「〜、明瞭なプラトーを観察した。」

3  シャープさに欠け避けるべき表現

 

  1. 〜〜が、
  2. 意味不明瞭な日本語の元凶とも言われている。特に「図1についてであるが、」のように主題の提示には使わないこと。
    「しかし」の意味で、可能な限り少なく使うのは可。この場合でも最初は,「...が、」では無い表現を考え、滑らかでない場合のみ「...が、(例:〜であるが)」を使う。

4  あいまいで避ける表現(使い方によっては、OK)

 

  1. 「〜に関わらず」→「〜に因らず」「〜とは関係無く」

5  口語的で避ける表現:

 

  1. 「とても」→「顕著に」
  2. 「だから」、「それで」、「なので」→「従って」、「このため」、「そのため」
  3. 「〜しないといけない」→「〜する必要がある」

5  非科学的な表現や研究者スラングで避ける表現

(例)
 フルの水素化物→化学量論組成の水素量の水素化物
 水素が抜けた→水素が放出した

6  まどろこしいので避ける表現

 「(大きい)状態の方より(小さい)状態の方が〜」→「(小さい)状態の方が〜」対義語で比較している場合。
 例えば「Ti添加よりCr添加の方が」のように対義語を使ってない場合は省略しない。

[参考文献の書き方]につづく