ハイフン・マイナス・enダッシュ・emダッシュの違いと使い分け

 ハイフン (-)、マイナス (−)、enダッシュ (–)、emダッシュ (—)は全て横棒で表される文字ですが、英文上は意味が異なり使い分けられています。日本人の私たちはどれも似たように思いがちですが、欧米人にはかなり違う意味に伝わるため注意が必要です。また、論文などでは和文でも使い分けられることが多いです。

enダッシュ / en dash(–)  範囲、関係を示す。

 enダッシュは、主に① 時間・場所・数値などの範囲、② 等価、対等な二つのものを並べる場合に使う記号です。
 日本語の論文で用例が多い場所は参考文献リストと思います。

J. J. Reilly and R. H. Wiswall, Jr., Inorg. Chem., 13, (1974) 218–222.
 また材料系の場合、系や物質の組成を表す場合も多いです。
Al–Mg binary phase diagram (Al–Mg二元系状態図)
Fe–18Cr–8Ni(18%クロム8%ニッケルの鉄合金)
 そのほか物理量など対等な2つを関係づけるような表現でも使われます。
time–temperature curve(時間–温度曲線)
 更に詳しく説明していきます。
 
① 時間・場所・数値などの範囲を表す。
pp. 1–22(1ページ〜22ページ)、0–5 V(0〜5ボルト)、
Tokyo–Osaka(東京–大阪間)
“to”と同様の役割を果たすと考えると良いでしょう。
 The restaurant is open 7am–11pm.
  レストランは午前7時から午後11時まで営業しています。
試合のスコアを表す場合にも使われます。
 Japan beat Spain 2–1.
  日本がスペインに2対1で勝った。
この–はtoと発音して読み、実際toに置き換えて記述可能です。
ただし、「~から~まで」(“from… to…”)の構文内で使う「to」の代わりとしては使えません。
  She works from 9am–5pm.
  She works from 9am to 5pm.
  彼女は午前9時から午後5時まで働きます。
 波ダッシュ(~)は日本語の記号なので欧文では使えません(半角の(~)はチルダと呼びます)。
 
② 等価、対等な二つのものを並べる場合に使う。
Al–Mg system(Al–Mg系)
pressure–composition–temperature diagram(圧力–組成–温度図)
Rayleigh–Jeans Law(レイリー・ジーンズの法則:Baron RayleighとJames Jeansの2人の名前)
  “and”や“versus” と同様の役割を果たすと考えると良いでしょう。
  ただし、「~から~の間」(“between… and…”)の構文内で使う「and」の代わりとしては使えません。
  He eats between 60–75 donuts per month.
  He eats between 60 and 75 donuts per month.
 
 学会誌によっては、enダッシュをマイナスとして使うように指示しているところもあります。

ハイフンenダッシュの混用に注意

 実際の英文では、異なる意味をもつハイフンやダッシュなどそれぞれを同時に使われることはよくあります。

TokyoShin-Osaka (東京–新大阪 間)
 「Shin-Osaka」で1語をつくるのでハイフンが使われ、それぞれの間を結ぶのでenダッシュが使われます。
presidentstudent meeting(社長と学生の会)
president-student meeting(社長である学生の会)
CurieWeiss law
  キュリー・ワイスの法則:CurieとWeissは別人
André-Marie Ampère
  アンドレ=マリ・アンペール:1人の人名