高圧合成された新規化合物

  「高圧合成について」で述べたように、数万気圧(GPaオーダー)の高圧下では、通常の圧力領域とは異なる現象が現れます。これらの現象を積極に利用することで、常圧領域では合成されない新しい化合物の探索を行っています。
 ここでは、新規合成された化合物・合金の一例を示しています。

高圧合成された新規マグネシウム合金

 下図はMg-Cu系二元系平衡状態図(常圧)と、高圧合成法により私たちが新しく合成した合金の結晶構造と組成を示しています。この材料設計の地図とも言える状態図には存在しない合金を、6GPa、800℃という高圧、高温の条件によってMg54Cu17、MgCu という新しい合金(金属間化合物)を高圧合成することに成功しました。状態図によると、この合成温度では常圧下では溶融しますが、6GPaの高圧下では溶けずに固相状態で合成反応が進行します。先に述べたようにGPaオーダーの高圧下ではMgなどアルカリ土類元素はCuなど遷移金属元素と比較して圧縮率が大きく、高圧下ではMgとCuの原子半径比が変化すると共に、Mgの融点がおよそ650℃から約1000℃に上昇した為に達成されました。これは固相反応下で結晶構成元素の原子半径比などジオメトリーを変化させる新しい材料設計ということができます。


図 Mg-Cu系二元系平衡状態図(常圧)と、新規に高圧合成された合金