高圧合成装置
GPaオーダーの高圧発生方法は、動的、静的の二つに大別することができます。動的法は衝撃波を用いて圧縮する衝撃圧縮が主流ですが、私たちが用いる高圧合成法は静的法によるものです。静的超高圧を用いた研究は、1946年にノーベル賞を受賞したP.W.Bridgmanらによって確立され、ピストンシリンダー装置及び対向アンビル装置を開発し、高圧下での物性の性質を調査されました。私の研究で用いる高圧合成装置 (a)700トンプレスと、(b)その内部に配される(100)マルチキュービックアンビルシステムを示します。アンビルシステムの中心に、試料セルを置いてあります。アンビルはタングステンカーバイド(WC)製で、先端は約1平方センチメートルとなっているため、最大700トンの加重の先端でGPaオーダーの高圧が発生するように設計されています。この装置では約6GPaまで発生させることができます。
(a)700tonプレス
(b)マルチキュービックアンビルシステム
図 高圧合成装置 :(100)型
高圧合成の試料セル
下図に高圧合成に用いられる(a)試料セルと(b)内部水素源を用いた超高圧水素合成セルを示します。試料セルの構成は、圧力媒体であるパイロフィライト、グラファイトヒーター、MoおよびSUS製電極、試料への汚染防止と電気的絶縁体の役割を担うBNセルの中にサンプルを配した試料セルを準備します。これをアンビルシステムの中心に置いて高圧合成します。
ところで、ダイヤモンドがおよそ6GPa、1200~1800℃の条件で得られることからも、圧力の大きさが分かるかと思います。
図 高圧合成の試料セル
NaBH4 + 2Ca(OH)2 → NaBO2+ 2CaO +
この際、水素はNaClカプセルによって封じられているために、内部水素源と共に配したサンプルは高温・高圧水素処理されることになります。この高圧水素セルは中央大学の深井教授(現:東大生産研)らによって開発され、深井先生のご指導のもとで、我々のグループにおいて高圧合成用セルとして応用したものを用いています。
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