プロジェクト研究

フルスケール高速走行軌道実験設備

 フルスケール高速走行軌道実験設備は北海道大樹町多目的航空公園滑走路脇を建設予定地としており,全長3km,最高速度マッハ2での運用を想定しています.フルサイズ軌道設備で実証した各種基盤技術を元に,ロバストで多用途に適する軌道設備の設計構想を描いています.

大樹町多目的航空公園
大樹町多目的航空公園における高速走行軌道設備の建設予定地

軌道レイアウト

 建設予定地は海岸から陸に向かって4/1000程度の傾斜となっており,平地に均すことは大幅なコストの増加を招きます.制動用水路を設置する1km程度の区間については水平である必要がありますが,加速区間においては緩い勾配をそのまま利用した軌道レイアウトを想定しています.この際に重要になるのが,傾斜路と水平部をつなぐ円弧の曲率半径の設定です.遠心力は速度の二乗に比例しますので,曲率半径が1000mの部分をマッハ1で通過した際の遠心力は10Gに達します.
 また,海から陸への加速とするか,陸から海への加速とするかも大きな問題です.高速・高加速度環境を生かした試験設備としての用途では推進系の騒音を出来るだけ抑えるため,海から陸へ向けての走行が望ましいと考えられます.(ロケットやジェット騒音はナナメ後ろ方向に最大の音圧を伝播します.)一方で,陸から海へ射出する場合には実験機の離陸補助などに利用できます.大樹町の南東方向は大きく開けており,ロケット・超音速実験機等の発射に適しています.下図にスレッドによる離陸補助のイメージ図と,ロケットプレーン加減速プロファイルの一例を掲載します.  

スレッドによる離陸補助
スレッドによる離陸補助イメージ

sledlaunch
スレッドによるスペースプレーンの離陸補助

推進装置

 地上でマッハ2を実現するには,高空でのマッハ2とは比較にならないほどの大きな動圧に打ち勝つ必要があります.一例として,投影面積1平方メートル,抗力係数が0.3のスレッドはマッハ2において約8.5tonの力を受けます.ロケットスレッドの推進装置として最も有望な候補は液体酸化剤とプラスチック燃料を用いたハイブリッドロケットです.ハイブリッドロケットは固体ロケットと比べて輸送・保管・運用の点で極めて安全性が高く,低コストで調達できます.また,酸化剤のスロットリングが可能であるため一定速度を保った走行プロファイルを実現することも可能です.1~2ton程度のハイブリッドロケットをクラスタ化し,多様なミッション要求に応えることの出来る推進システムを検討しています.