第21回 / 令和7年12月11日(木) 13:00~17:40 場所:室蘭工業大学 教育・研究2号館(Q棟)4階 数学ゼミナール室 Q402
講演者&講演要旨
講演者:平山浩之氏(宮崎大学)
講演題目:H型群上の非線形シュレディンガー方程式の適切性について
講演要旨
ハイゼンベルグ群を典型例とするH型群上の非線形シュレディンガー方程式の初期値問題について考える. H型群は集合としては(2d+p)次元のユークリッド空間と等しいが, 幾何的構造はユークリッド空間とは大きく異なる. その要因は,中心と呼ばれるp次元成分における演算規則の非可換性にあり,H型群上のシュレディンガー作用素の性質にもその影響が現れる. 特に,中心次元pが1の場合には,自由シュレディンガー方程式の解は時間の経過とともに中心方向に並進する(したがって時間減衰しない)ことが知られている. 本講演では, 中心次元が2以上の場合のストリッカーツ評価を導出し,それを非線形問題に応用することで得られた適切性についての結果を紹介する. なお,H型群上のシュレディンガー作用素は,ユークリッド空間上の磁場付きシュレディンガー作用素と深く関連する. 本講演の内容は大同大学の岡康之氏との共同研究に基づく.
講演者:津原駿氏(大阪大学)
講演題目:Nonlinear Neumann boundary value problem for the Schrödinger equation in the energy space
講演要旨
本発表では,非線形境界項を伴う半空間上のSchrödinger方程式の初期値境界値問題を考察する. 特に,保存則が定義できる程度の函数空間での適切性について述べる. L^2空間においては,非斉次境界項に対するStrichartz評価と非線形問題の適切性が既に示されている(Hayashi–Ogawa–Sato (2025), Ogawa–Sato–T. (2025)). 一方H^1 空間では, 境界法方向微分により従来の解表示が意味を持たなくなり,境界Strichartz評価が示されていなかった. 本発表では,法方向の微分を時間微分と接方向微分に置き換える別の解表示を導入し,Strichartz評価が改良できることを述べる. さらに非線形問題を考察し,適切性が得られる非線形項の指数の限界に言及する.
講演者:宮崎隼人氏(香川大学)
講演題目:絶対値型非線形項を持つ非線形Schrödinger方程式の非散乱について
講演要旨
非線形Schrödinger 方程式における, 散乱解の存在に関する閾値について考察する.考える非線形項は, Strauss指数未満の指数を持つ絶対値型の項を含む. 非線形項のべきがStrauss指数以上の場合, 非線形項の形状によらず小さな散乱解が存在することが知られている. 本講演では, 非線形項のべきがStrauss指数未満の場合, 初期値が滑らかでコンパクトな台を持つときでさえも,特定の重み付き空間の解は散乱しないことを示す. 本結果は, 非線形項が絶対値型の場合,重み付き空間において散乱が生じるか否かを決定する閾値として,Strauss指数が重要な役割を担っていることを示しており,スケール臨界な空間で散乱がいえるかが否定的に解決された点が新しい. なお本講演は,東京理科大学の側島基宏氏との共同研究に基づく.
プログラム
12月11日(金)
13:00-14:20 平山浩之氏(宮崎大学) 14:40-16:00 津原駿氏(大阪大学) 16:20-17:40 宮崎隼人氏(香川大学)
プログラムのPDF版はこちら.
本研究会は
「日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)課題番号:25K07093(代表:若狭恭平)」 「室蘭工業大学研究ユニット予算」
の援助を受けて開催されます.
世話人 可香谷 隆, 内免 大輔, 若狭 恭平 (室蘭工業大学ひと文化系領域数理科学ユニット)