第1回 / 平成25年1月18日

【講演者】
小薗英雄 氏 (早稲田大学理工学術院基幹理工学部数学科)
【講演題目】
Stationary Navier-Stokes equations in multi-connected domains
【アブストラクト】
In multi-connected domains, it is still an open question whether there does exist a solution of the stationary Navier-Stoeks equations with the inhomogeneous boundary data whose total flux is zero. The relation between the nonlinear structure of the equations and the topological invariance of the domain plays an important role for the solvability of this problem. We prove that if the harmonic part of solenoidal extensions of the given boundary data associated with the second Betti number of the domain is orthogonal to non-trivial solutions of the Euler equations, then there exists a solution for any viscosity constant. The relation between Leary's inequality and the topological type of the domain is also clarified. This talk is based on the joint work with Prof.Taku Yanagisawa at Nara Women University.

第2回 / 平成25年5月24日

【講演者】
石井克幸 氏 (神戸大学大学院海事科学研究科)
【講演題目】
On the convergence of an algorithm for the anisotropic mean curvature flow and its application to the crystalline curvature flow in the plane
【アブストラクト】
2004 年 Chamblle は変分法を基にした平均曲率流に対する近似アルゴリズムを提案し, その収束を L1 の意味で示した。その後,彼のアルゴリズムに対する拡張や その収束に関する研究が行われている。本講演では Chambolle のアルゴリズムを非等方的 平均曲率流に拡張した際の収束について最近得られた結果を紹介する。また,平面における クリスタライン曲率流への応用についても紹介する。

第3回 / 平成25年8月5日

【講演者】
Jong-Shenq Guo 氏 (Department of Mathematics, Tamkang University)
【講演題目】
On a free boundary problem for a two-species weak competition system
【アブストラクト】
We study a Lotka-Volterra type weak competition model with a free boundary in a one-dimensional habitat. The main objective is to understand whether the two competing species spread via a free boundary. Under some conditions, we first establish a spreading-vanishing dichotomy which was proposed initially by Du and Lin, SIAM J. Math. Anal. (2010) for a logistic equation. Then we provide some sufficient conditions for spreading success and spreading failure, respectively. Finally, for spreading success, we prove that the asymptotic spreading speed cannot be faster than the minimal speed of traveling wavefront solutions for the competition model on the whole real line without a free boundary. This talk is based on a joint work with Chang-Hong Wu.

第4回 / 平成26年6月25日

【講演者】
藤嶋陽平 氏 (大阪大学大学院基礎工学研究科)
【講演題目】
Blow-up set for a superlinear heat equation and pointedness of the initial data
【アブストラクト】
本講演では, 冪乗型非線形項や指数型非線形項を含む一般の非線形性を持つ非線形熱方程式の爆発集合の位置の特徴付けについて考察する. 拡散係数が十分に小さい場合には, 拡散項に比べて非線形項の効果が強くなり, 解は初期値の最大点近くでのみ爆発する. 特に, 非線形項が冪乗型の場合には, 爆発時刻直前での解の形状を詳細に調べることにより, 爆発集合の位置と初期値の形状に関する詳細な結果を得ることができる. この議論では, 解のあるスケール変換に対する方程式の不変性が重要な役割を果たしており, 一般の非線形性を持つ方程式の爆発問題にこれらの議論を直接適用することは難しい. 本講演では, このスケール変換の一般化を導入することで, 一般の非線形性を持つ方程式に対しても爆発集合の位置と初期値の形状に関する結果が得られることを紹介する.

第5回 / 平成28年4月16日

【講演者】
和久井洋司 氏 (東北大学大学院理学研究科)
【講演題目】
高次元における移流拡散方程式の解の非有界性と有限時間爆発
【アブストラクト】
3次元以上のユークリッド空間における移流拡散方程式の初期値問題について考察する。 移流拡散方程式はスケール不変性を持ち,その不変スケールで不変な空間$L^{¥frac{n}{2}}$ において、初期値が十分小さい場合、Corrias-Perthame-Zaagは解が時間大域的に存在 することを示した。一方で、初期値の質量と比較して,初期値の2次モーメントが十分小さ い場合,BilerやCorrias-Perhtame-Zaagは解が有限時間で爆発することを示した。本講演では,初期値に対するモーメントの制約を緩和した場合に得られた解の非有界性と有限 時間爆発について報告する。

第6回 / 平成29年3月30日

【講演者】
黒川友紀 氏 (北海道教育大学教育学部釧路校)
【講演題目】
低次元における非線形波動方程式系の初期値問題について
【アブストラクト】
本講演では,非線形波動方程式系の初期値問題を低次元空間において考える。 非線形項は,未知関数のべきの形とし,強い相互作用をもつものとする。 初期値は十分小さく,多項式減衰しているものとする。 この初期値の減衰度合いの違いが解にどのような影響を及ぼすかを,以前空間3次元に おいて考察したが,2次元の状況とあわせて,整理して詳細を報告したい。

第7回 / 平成29年3月31日

【講演者】
新村貴之 氏 (北海道大学大学院理学院数学専攻)
【講演題目】
キルヒホッフ型梁方程式のアトラクターについて
【アブストラクト】
この講演では梁方程式と呼ばれる梁(或いは棒)の横振動の様子を記述する方程式について,梁の伸びによる張力の変化と梁の回転に関する動的効果を考慮に入れた回転慣性付きのキルヒホッフ型梁方程式についての安定性について考察したいと思う。具体的には,本講演では梁方程式のアトラクターの存在と,それらの構造について論じたいと思う。また,余裕があれば回転慣性付きの方程式とない場合のそれについての関係についても触れたいと思う。

【講演者】
福田一貴 氏 (北海道大学大学院理学院数学専攻)
【講演題目】
一般化されたKdV-Burgers方程式の解の漸近挙動について
【アブストラクト】
本講演では,非線形波動を記述する方程式の一つである,一般化されたKdV-Burgers方程式の解の漸近挙動について取り扱う。この方程式の解については,非線形散逸波と呼ばれるBurgers方程式の自己相似解が漸近形となる。本研究では,解の第2漸近形を構成し,非線形散逸波への最適な漸近レートを得ることができた。また,同様に非線形散逸波が漸近形となる,一般化されたBurgers方程式や,標準的なKdV-Burgers方程式に関する過去の結果と比較することで,分散項や非線形項の構造が解の挙動にどう影響してくるのかを考察する。

第8回 / 平成29年7月28日

【講演者】
柴田将敬 氏 (東京工業大学理学院)
【講演題目】
半線型楕円型方程式の無限個の解の存在について
【アブストラクト】
非線型Schrödinger方程式の定在波解が満たすような,半線型楕円型方程式を考え,その無限個の解の存在について議論する。 変分構造を用いれば,解の近似列であるPalais-Smale列は容易に構成できる。 しかし,非線型項を一般化した設定においては,有界領域ではPalais-Smale列のH^1有界性がわからず,全空間では,エネルギーの高いPal ais-Smale列のコンパクト性がわからない。 本講演では,汎関数を上手く変形することにより,有界領域で無限個の解を構成し,その極限として全空間における解を無限個構成する。 なお,本研究は,佐藤洋平氏(埼玉大学)との共同研究に基づく。

第9回 / 平成30年2月10日

【講演者】
吉田夏海 氏 (立命館大学)
【講演題目】
Asymptotic stability of the viscous shock waves to the Cauchy problem for the scalar conservation law with nonlinear flux and viscosity
【アブストラクト】
We study the large time asymptotics of solutions to the Cauchy problem for the one-dimensional scalar viscous conservation law where the far field states are prescribed. Especially, we deal with the case when the flux function is a non-convex nonlinear function, and also the viscosity is a nonlinear function. Then the Cauchy problem has a unique global in time solution which tends toward a viscous shock wave as time goes to infinity. The proof is given using a technical weighted energy method associated with the nonlinearity of the flux and the viscosity.

第10回 / 平成30年3月7日

【講演者1】
佐藤拓也 氏 (東北大学大学院理学研究科数学専攻)
【講演題目】
非線形シュレディンガー方程式系の解の解析的平滑化効果と質量共鳴
【アブストラクト】
Raman散乱を記述する非線形シュレディンガー方程式系の, 初期値問題の解の 解析的平滑化効果について考察する。質量共鳴条件の下, 空間次元4以上で初期値 が十分小さい場合, 解が時間大域的に解析的平滑化効果を持つことが知られている。 ここでは, 時間局所解に限定し低次元の場合に解が解析的平滑化効果を持つことを 報告する。

【講演者2】
中里亮介 氏 (東北大学大学院理学研究科数学専攻)
【講演題目】
臨界Besov空間における密度依存の磁気流体方程式系の渦度正則性条件について
【アブストラクト】
2次元以上のユークリッド空間における密度依存の磁気流体方程式系 (ここでは簡単に,MHDと呼ぶことにする)の初期値問題について考察する。 1984年にBeale-Kato-Majdaが初期値に滑らかさを課した場合に, Euler方程式の時間局所解が正則になるための十分条件を渦度の挙動により与えた。 本講演では、Abidi-Paicuにより保証されたMHDの解に対する, 渦度正則性条件について得られた結果を報告する。

【講演者3】
瓜屋航太 氏 (岡山理科大学理学部応用数学科)
【講演題目】
Long range scattering for nonlinear Schr\"odinger equation with critical homogeneous nonlinearity in 3d
【アブストラクト】
非線形Schr\"odinger方程式の解の漸近挙動を終値問題の枠組みで考察する。 非線形項が臨界冪をもつ場合には解の漸近挙動は非線形項の構造に依存する ことが知られている。必ずしも多項式ではない一般の臨界斉次非線形項を考え, 解の漸近挙動が(修正)自由解になるための十分条件を与える。 また,解の第2次近似形に関する部分的な結果を与える。 本講演は眞崎聡氏(大阪大学),宮崎隼人氏(津山高専)との共同研究に基づく。

第11回 / 平成30年6月29日

【講演者】
上田好寛 氏 (神戸大学)
【講演題目】
非対称な緩和項を持つ対称双曲型方程式系の消散構造の解析
【アブストラクト】
消散構造を持つ対称双曲型方程式系の平衡点の安定性を判定する条件として,Shizuta-Kawashima(1985)や Umeda-Kawashima-Shizuta(1984)によって構築された安定性条件が知られています。この安定性条件は, 離散Boltzmann方程式や緩和効果を加えた圧縮性Euler方程式の線形化問題などに適用することができます。 この安定性条件を適用するためには,方程式系がある種の対称性を持つことが必要ですが,近年、梁の振動に起因した Timoshenko方程式や,プラズマ現象に起因したEuler-Maxwell方程式など,その対称性を持たない物理モデルも 知られてきました。そこで,既知の安定性条件を再定式化することで,これらを包括するより複雑な方程式系に対しても 安定性を示すことが本講演の目的です。証明の一つの鍵となるのがLyapnov関数の導出ですが,方程式系に内在する 対称性に着目して有用なLyapnov関数を構成します。また本講演では,新たな安定性条件の応用例についても解説する予定です。

第12回 / 平成30年8月27日

【講演者】
橋詰雅斗 氏 (愛媛大学)
【講演題目】
Trudinger-Moser不等式に関する最大化問題におけるコンパクト項の影響
【アブストラクト】
2次元Trudinger-Moser不等式に関連するある最大化問題を考察する。 2次元Trudinger-Moser不等式は,高次元の臨界Sobolev埋め込みに相当するものであるとみなすのが自然であるが, 有界領域における最良定数の達成可能性に関しては,Sobolevの最良定数とは異なり達成されるという結果が知られている。 本講演ではその事実について考察するとともに,達成可能性に影響を与えると考えられるコンパクト項を加えた最大化問題を考察する。

第13回 / 平成31年3月8日(金)

【講演者】
藤江健太郎 氏 (東京理科大学)
【講演題目】
感応性関数をもつ走化性方程式について
【アブストラクト】
3次元以上のユークリッド空間内の有界領域における感応性関数をもつ走化性方程式の初期値境界値問題について考察する.線形の感応性関数をもつ場合には,初期値の全質量の大きさとは無関係に有限時刻で爆発する解の存在が知られている.一方で,特別な非線形の感応性関数をもつ場合には爆発解の非存在が示されている.本講演では,一般の感応性関数をもつ場合を対象として,感応性関数の減衰度合いによって,爆発解の存在・非存在を分類することを目標とする.特に,2本の放物型方程式の連立系である走化性方程式を単独の非線形非局所熱方程式の摂動として扱うことにより,時間大域存在の十分条件を導出する.本講演は仙葉隆先生(福岡大学)との共同研究に基づく.

第14回 / 令和元年7月13日(土)

【講演者1】
村田美帆 氏 (神奈川大学)
【講演題目】
Navier-Stokes-Korteweg 方程式に対する時間大域解の一意存在性について
【アブストラクト】
Navier-Stokes-Korteweg 方程式は 気液相転移をともなう圧縮性粘性流体の運動を表す方程式として知られ,Dunn and Serrin(1985)により導出された.本講演では,Navier-Stokes-Korteweg 方程式を3次元以上の全空間で考察し,定数状態のまわりで,十分小さな初期値に対する時間大域解の一意存在性を証明する.一般に,有界領域であれば指数減衰する解の存在を得ることができるが,非有界領域では指数減衰評価を得ることは期待できない.そこで最大正則性評価と線形化問題の解に対する減衰評価を組み合わせることにより,時間局所解を延長するために必要な評価式を導出する.なお,本研究は,早稲田大学の柴田良弘教授との共同研究に基づく.

【講演者2】
小川卓克 氏 (東北大学)
【講演題目】
2次元 Keller-Segel系の移流拡散方程式への臨界空間における特異摂動
【アブストラクト】
2次元Keller-Segel系は粘菌性細胞の走化性運動を記述するが,その緩和時間零極限として,しばしば誘引型・移流拡散方程式が挙動を象徴する問題として議論される. ここでは一般化最大正則性を用いて,空間2次元でのKeller-Segel系の緩和時間・零極限を臨界Bocher-Lebesgue空間で議論し,極限函数が誘引型・移流拡散方程式を満たすことを示す.

第15回 / 令和元年10月23日(水)

【講演者】
清水翔之 氏 (神戸大学)
【講演題目】
初期値をデルタ関数とする非線形シュレーディンガー方程式系の漸近挙動
【アブストラクト】
結合定数が複素数となる非線形項を持ったシュレーディンガー方程式系を考える。この場合,結合定数の虚部の符号と初期値の振幅のバランスによって解の漸近挙動が変化する現象が,初期値をデルタ関数とする特殊解の場合に生ずる事を紹介する。 非線形項のべきが一致する場合には方程式は明示解を持ち(富山県立大学の土井一幸氏との共同研究), べきが異なる場合でも詳細な漸近挙動を知る事が出来る事を報告する(熊本大学の北直泰氏との共同研究)。

第16回 / 令和2年2月14日(金)

【講演者】
小坂篤志 氏 (佛教大学)
【講演題目】
滑らかではない境界を持つ領域上の半線形楕円型方程式とその正値解
【アブストラクト】
本講演においては, 半線形楕円型方程式の正値解とその定性的な性質・形状に関 する結果について報告する.半線形楕円型方程式を解析する際においては, その 領域の境界が滑らかであるという仮定を置く場合が多い. 本研究においてはその 仮定を緩め, Lipschitz境界条件を仮定した場合の, 正値解の定性的な性質の解 析を行う. 特に, 半線形楕円型方程式の解の凝集現象に焦点を当て, 領域の"最 も鋭く尖った点"に解が凝集することを示し, また, その際の解の形状に関する 結果も与える.

第17回 / 令和2年9月28日(月)

【講演者】
藤江健太郎 氏 (東北大学)
【講演題目】
On a Chemotaxis Model with Local Sensing
【アブストラクト】
Local sensingに基づく走化性運動を記述する数理モデルの初期値境界値問題について考察する. よく知られたKeller-Segel系はGradient sensingに基づく走化性運動を記述している. Local sensingの数理モデルとKeller-Segel系の定常問題は一致し, 同じリャプノフ汎関数を持つ. 本講演では, 空間2次元における解の長時間挙動の質量臨界現象の存在を示す. また, 知覚函数の減衰度合いによって, 爆発解の存在・非存在を分類することを目標とする. さらに, 空間高次元の場合について両者の比較を行う. 本講演はJie Jiang氏(Chinese Academy of Sciences)との共同研究に基づく.

第18回 / 令和3年9月28日(月)

【講演者】
濱本直樹 氏 (大阪府立大学)
【講演題目】
制約条件付きベクトル場に対する不確定性原理
【アブストラクト】
量子力学の不確定性原理を表す関数不等式として、 Heisenbergの不確定性不等式およびHardy型不等式が 最良定数付きで知られている。本講演では、主にこれらの不等式を ベクトル値関数に対して考察する。 具体的には、テストベクトル場を渦なし又はソレノイダル条件で制約した場合に 最良定数がどのような値に変更されるかを問題にする。 最良定数の具体的な値を求める計算は一般に容易ではないが、 計算可能な場合について いくつかの結果を紹介する。 本講演内容の一部は、高橋太教授との共同研究結果を含む。 また、本研究は科研費(課題番号:21J00172)の助成を受けている。