Information/Sensibility
製造者がどんなに良いと考えて開発した製品/システムであっても,ユーザに受け入れられなければ売れません。一方で,ユーザが真に欲しい製品/システムが開発できるとも限りません。このように,製造者とユーザの双方を満足させることは難しく,なかなかwin-winの関係が作れません。
それでは,どんな対策をすれば良いのでしょうか?私の研究は実利用環境に製品を設置し,ユーザの利用に即した主観(官能)評価を行うことで,真の製品評価を行うとともに,その結果の客観評価(コンピュータ内での計算評価)を設計します。この手法は私が専門とする聴覚だけでなく他の感覚(視覚・触覚・嗅覚・味覚)でも共通するアプローチです。
屋外でのスピーカーの聴こえやすさを改善するために,実際に設置したスピーカーから放送した音声を録音し,防音ブースで多数が参加した聴取実験を行いました。その結果,製品と伝送距離別に聴こえについて定量化でき,新製品が旧製品よりどの程度優れているかを明らかにするとともにその客観評価として計算可能な統計モデルを設計しました。ダミーヘッドを利用すれば,単にマイクロホンを利用するよりも人間の聴取を高度に再現可能です。
どんな製品やシステムもユーザがいるのであればユーザビリティの主観評価が可能です。まずは,「製品/システムを誰がどのように使うか?」をきちんとモデル化します。そしてその評価を自動化できるメソッドを考えます。例えば機器の正常状態が安定して定義できるならそれと異なる異常の検出といった応用も可能です。
従来は国際標準になるような⼤規模な実験でしか実現できなかった客観評価モデルの自社製品データからの構築など,製品評価の自動化に貢献します。
どんな製品も作る側は専門家の玄人です。素人のユーザが何を評価するかは,多くの場合で玄人には理解し難いことが含まれます。このギャップを埋めるのがユーザセンタードデザインです。貴社の製品開発に新しい目線を追加することに関われれば幸いです。
防音ブース(簡易スタジオ),ダミーヘッド,バイノーラルマイク,騒音計