航空宇宙機システム研究センターでは超音速無人実験機の主推進システムとしてガスジェネレータサイクル・エアターボ・ラムジェットエンジン(GG-ATR)を選定しました.これは液体酸素とバイオエタノールの燃焼ガスによってタービンを回し,斜流圧縮機によって吸い込まれた空気を交えてブーストするものです.従来のジェットエンジンよりも高い推重比を達成します.2016年度には,回転系の冷走試験およびタービンを駆動するためのガスジェネレータ―製造に着手しています.
| 諸 元 | |
|---|---|
| 全長 | 780 mm |
| 直径 | 220 mm |
| 乾燥重量 | 30.0 kg |
| 定格推力 | 3 kN |
| 定格回転数 | 58000 rpm |
| 比推力 | 600 s |
| 推重比 | 11 |
| スロットリング特性 | 40~100% |

GG-ATRタービン・圧縮機の動バランス試験
コールドガスをタービンに供給することによりGG-ATRエンジン回転系の振動特性および軸受冷却の効果を確認しています.2015年度には12000rpmで軸変位100um以上の大きな振動が発生することが確認されたため,動バランスの再調整や軸受けダンパーの変更を含む改修を実施しました. これにより1次共振点での振動が抑えられ,安定した動作を実現しました.2016年度には定格回転数58,000rpmでの動作を実証しました.

コールドガス供給設備(窒素/ヘリウム)
GG-ATR冷走試験の様子
GG-ATRエンジンはガスジェネレータ―(GG)で発生した燃焼ガスによりタービンを駆動します.ガスジェネレータ―の燃料にはエタノール,酸化剤には液体酸素を使用します.GGの燃焼圧が低下すると燃焼振動を引き起こすため,2台のガスジェネレータ―を併用し片側をカットオフすることで着陸時に必要なディープスロットリングを達成します. 毎秒数十グラムの流量域では液体酸素は二相流化しやすく,高精度の流量推定モデルを用いる必要があります.

ガスジェネレーター単体燃焼試験の様子(液体酸素/エタノール)
ガスジェネレーター燃焼試験の様子(燃焼時間20秒)
| 諸 元 | |
|---|---|
| 燃焼室圧力 | 1.35 MPa |
| 燃焼室温度 | 1100 K |
| 液体酸素流量 | 218 g/s |
| エタノール流量 | 482 g/s |
| O/F | 4.5 |
| インジェクタ配置 | F-O-F 三点衝突型 |
| 燃焼器材質 | Inconel 718 |
GG-ATRエンジンに吸い込み空気を導くインテークは,内部で剥離等が起こらないよう十分に浅いダクト角を有することが理想ですが,重量や構造強度の問題からは短くコンパクトにすることが求められており,このトレードオフで設計点が決められます.CFD解析と風洞試験によるパラメトリック・サーベイを実施しています.

インテーク風洞試験モデル(左:60°改良モデル 右:45°改良モデル)

インテーク流れの数値解析