光物理化学研究室/飯森研究室
About
当研究室では,物質の発光や光物性などの光にかかわる研究を行っています.特に分子のスペクトルを測定する学問分野である分光学を核とした研究をすすめています.
研究対象として,『光る』分子や金属錯体,発光ナノ粒子,さらにナノ構造体の『磁性』と『磁気光学効果』にも興味を持ち,基礎研究をすすめています.また,量子センサー,新しい磁気光学デバイスの開発,および植物バイオマスの有効利用にフォーカスし,社会に貢献することを目指して研究しています.
研究室には留学生が複数名在籍しており,学生諸君の英語コミュニケーション能力を磨く機会に恵まれた環境です.卒研生の時は英語が全く苦手だった学生も,気がつくと英語で会話できるようになっていることが多いです.学生諸君の成長につながると思います.もちろん英語が苦手な方でも大丈夫ですので,安心してください.
新着情報
- (April 2 2024) 飯森が理工学部システム理化学科学科長に就任しました.Dr. Iimori was appointed to be Dean of the Department of Sciences and Informatics.
- (March 22 2024) 卒業式があり修士5名,学部4年生4名が無事卒業しました.おめでとうございます! Master course students, Nao, Kazuya, Kouta, Yuma, Kazuki and four undergraduate students, Sho, Taiki, Yuusuke, and Hina were successfully graduated from Muroran Tech. Good luck!
- (January 23-24 2024) 日本化学会冬季研究発表会で新岡、小島が発表をおこないました.Master course students, Y. Niioka, and N. Kojima gave a talk at Chemical Society of Japan Hokkaido Branch winter meeting.
- (January 7 2024) 第59回応用物理学会北海道支部/第20回日本光学会北海道支部合同学術講演会でBulu MD Rahman君が有機半導体分子の電場吸収スペクトルについて口頭発表をおこないました.Bulu MD Rahman gave a talk at The Japan Soceity of Applied Physics Hokkaido Branch on electroabsorption spectroscopy of organic semiconductors.
- (October 20 2023) Our paper (collaborated with Dr. Uwai, Dr. Tokuraku) was published in Molecules, On-Site Evaluation of Constituent Content and Functionality of Perilla frutescens var. crispa Using Fluorescence Spectra. Thanks!
- (September 25 2023) Ahatashamul Islam君が本学大学院博士後期課程を無事修了し博士(工学)の学位を取得しました.おめでとうございます!神戸大学での活躍を祈念します.Ahatashamul Islam was graduated from the doctor course of Muroran Tech. Congratulations!
- (September 16 2023) 日本鉱物科学会2023年年会(大阪)で北海道産蛍光オパールの研究発表をおこないました(飯森). Professor Iimori gave a talk at Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences in Osaka on the fluorescence spectroscopy of fluorescent opal coming from Hokkaido.
- (September 6 2023) 光化学討論会2023(広島)で前年度光化学協会賞受賞招待講演をおこないました(飯森). Professor Iimori gave a invited award lecture at Japanese Photochemistry Association in Hiroshima.
- (September 3 2023) 日本化学会夏季研究発表会(旭川)で中西, Orthee, Ahatashamulが口頭発表しました. Undergraduate student, H. Nakanishi, and Noor E Ashrafi, and Ahatashamul Islam gave a talk at Chemical Society of Japan Hokkaido Branch Summer meeting.
- (July 18 2023) Ouur paper of electroabsorption spectroscopy of TCNQ was published in Physical Chemistry Chemical Physics Charge-transfer state and state mixing in tetracyanoquinodimethane probed using electroabsorption spectroscopy. Congratulations!
- (July 3 2023) 化学生物システムコース教授に昇任しました(飯森).Dr. Iimori was promoted as a Professor of Course of Chemical and Biological Systems.
- (April 20 2023) 光化学協会の会誌「光化学」に総説論文「セリウム錯体の光触媒反応と強発光」を発表しました(飯森).The review paper, titled photocatalytic reations and strong luminescence of cerium complexes, was published by Dr. Iimori in Photochemistry, the official journal of The Japanese Photochemistry Association.
- (March 23 2023) 卒業式があり修士2名,学部4年生4名が無事卒業しました.おめでとうございます! Master course students, Masatoshi and Riku, and four undergraduate students, Eran, Taichi, Takeru, and Ryohei were successfully graduated from Muroran Tech. Good luck!
- (March 2023) Ahatashamul Islam gave a talk at Creative Collaboration Center Workshop in Muroran Tech.
- (February 2023) Our paper of electroabsorption spectroscopy of Thioflavin-T was accepted in The Journal of Physical Chemistry A, Electroabsorption and Stark Fluorescence Spectroscopies of Thioflavin T. The paper was selected as a Supplementary Cover art, and tweeted in the official twitter of ACS publication! Congratulations!
- (January 17 2023) Our paper (collaborated with Dr. Tokuraku, Dr. Uwai, Dr. Yamanaka) was published in Foods, Cultivation Factors That Affect Amyloid-β Aggregation Inhibitory Activity in Perilla frutescens var. crispa. Thanks!
- (October 2022) Hina Nakanishi joined our laboratory as a student of 学士修士一貫コース. Welcome!
- (September 2023) 飯森准教授が光化学協会の『光化学協会賞』を受賞しました!授賞式は2022年度光化学討論会会期中の光化学協会総会(京都大学)で執り行われました. Dr. Toshifumi Iimori was awarded The Japanese Photochemistry Association Award, which is awarded to a scientist who has made an outstanding achievement in the study of photochemistry. Congratulations!
- (23 June 2022) Ahatashamul was awarded Best Poster Prize of 37th Symposium on Chemical Kinetics and Dynamics held in Sendai. The title of his presentation was External electric field effects on the photophysics of thioflavin-T in a PMMA film. Congratulations!
- (19 May 2022) A paper of carbon dots synthesized from starch has been published in Carbohydrate Polymer Technologies and Applications. This work was performed in collaboration with Dr Uwai and Professor Tokuraku. Thanks!
DOI:/10.1016/j.carpta.2022.100218
- (27 Apr 2022) Ms. Noor-E-Ashrafi joined our group under the support of the MEXT scholarship.
- (5 Apr 2022) New page was uploaded.
- (10-11 March 2022) 『表面科学セミナー2022(実践編)』に参加しました.
- (23 March 2022) 卒業式があり7名の学生が巣立ちました.おめでとうございます.
分子および金属錯体の合成と発光メカニズム
Luminescent
molecules
キノイド型分子や希土類金属錯体の合成と発光メカニズムの研究をおこなっています.TCNQは1960年代にはじめて合成された分子で,物性化学や有機半導体分野で極めて重要な分子です.我々はTCNQの蛍光スペクトルの測定を行い,蛍光強度が溶媒の極性に非常に鋭敏に応答することを世界に先駆けて明らかにしています.さらに励起状態をフェムト秒時間分解分光で研究した結果,TCNQの発光は熱活性化遅延蛍光であることを突き止めました.他大学との共同研究にも発展し,将来的に非線形光学効果と伝導性・磁性を兼ね備えた多重機能材料の開発につながると期待しています.またセリウム錯体の合成と光化学についての研究もすすめています.セリウムは現在,資源として余っており,セリウムの新規用途開拓が世界的な課題となっています.我々は持続可能な社会の構築に貢献するサスティナブルケミストリーの観点から,セリウムを原料にした新しい光材料の合成にチャレンジしています.
電場変調(シュタルク)分光法による励起子の解明
Stark
spectro-
scopy
分子のスペクトルのシュタルク効果は電場吸収スペクトルといいます.当研究室では実験装置を自作することで,世界的にみてもユニークな実験を行っています.特に光励起によって生成する励起子の振る舞いに注目して研究をすすめています.これまでに有機半導体分子のルブレンやパイ共役系高分子,色素増感太陽電池のシュタルクスペクトルを測定し,論文として発表しています.アミロイドβは,アルツハイマー病の原因と考えられていますが,その形成プロセスを研究する際に蛍光バイオイメージング法が多用されています.そのような実験で蛍光プローブ分子であるチオフラビンTが広く利用されています.当研究室ではチオフラビンTのシュタルクスペクトルを研究し,光励起状態を詳細に解明することに成功し,アミロイドβの表面に存在する電場を解明する手がかりを得ています.本研究の論文はACS publication(アメリカ化学会)のオフィシャルツイッターアカウントでツイートされました.
発光およびセンシングのためのカーボン材料の研究
C-Dots
カーボンドットは重金属を含まず低毒性であることから環境に優しい発光ナノ材料として有用です.植物バイオマスを蛍光カーボンドットに物質変換し価値を生み出す研究に取り組んでいます.さらに近年,炭素中の欠陥(NVセンタ)を利用した量子センサーの研究が注目されています.量子センサーを利用したあたらしいフィールドの開拓にもチャレンジします.
磁性ナノ粒子の合成と磁気物性
Magnetic
nano-
particles
金属酸化物は触媒や磁性材料として幅広く応用されています.我々は磁性ナノ粒子を合成し,その磁気物性を研究しています.反強磁性体のナノ粒子は複雑な磁気物性を持つことが知られていましたが,複雑さゆえに磁気物性の解析が困難でした.我々はこの問題に新しい解析手法でアプローチし,コアーシェル磁気構造と超常磁性の起源を明らかにしています.
磁性ナノ粒子分散系の構築と磁気光学効果
Magneto-
optical
effect
磁性ナノ粒子を合成しコロイド分散系を構築して磁気光学効果を研究しています.従来の物質を超える巨大な磁気光学効果の発現を目指して研究を行っています.
リグニンの機能材料化
Lignin
リグニンは木質バイオマスの主要成分の一つで製紙工程で排出される物質です.従来は主に燃料として燃やしてエネルギー源に利用されていましたが,機能材料を合成するための素材としての利活用が課題になっています.木質バイオマスからリグニンを抽出する新しい手法を開発し,リグニンを植物由来の資源ととらえて物質変換による機能材料の創生により,カーボンニュートラルに貢献することを目指しています.
2023年度メンバー(February 2024)
DC(博士)2:2名・MC(修士)2:5名・卒研B4:4名(うち学士修士一貫課程):1名.
DCの学生は留学生.
アカデミア
神戸大学博士研究員、
進学
総合研究大学院大学(分子研)修士課程、東京工業大学大学院
企業
日鉄テクノロジー、GSユアサバッテリー、日本ケミコン、北海道電力、北海道糖業、トヨタ自動車北海道、キオクシア、(株)キッツ、自衛隊(陸)幹部候補生、極東高分子、ナシオ、Jデバイス、レイズネクスト、奈良機械製作所、ほくさん、ニプロ、NOK(株)、フジクリーン工業、ミネベアミツミ、東西化学産業、ヒガシモト機械、他
分子のスペクトルに関する高度な知識と実験スキルが身につきます
分子のスペクトルを解明する学問分野は分子分光学といいます.分子分光学は,量子化学や量子力学の最も重要な応用の一つであり,歴史の古い学問です.そのため過去の膨大な研究の蓄積があります.
分子のスペクトル測定は,材料開発や電池などのエネルギーデバイス開発,宇宙望遠鏡,さらには生物学や医療といった極めて広範囲に応用されています.
当研究室で研究に取り組むことで,分子のスペクトルや電子状態に関する知識を身につけることができます.また実験結果を深く理解するためには,量子化学計算も大いに参考になります.そのため量子化学計算を研究に取り入れています.当研究室では分子分光や光化学・電子構造論の基礎を大事にしています.基礎をしっかりと身につければ,研究室を卒業した後でも様々な分野で活躍できると期待できます.
学生であっても研究の最前線での評価に耐える成果を得ることを目指しています
学生諸君の取り組みを全面的にバックアップします.これまでに在籍した卒業研究や修士課程の学生諸君は,学会発表や論文執筆,国際学会での発表などで活躍しています.また学会の講演で講演賞も受賞しています.
努力して得た実験結果を,徹底的に考察することを我々の研究スタイルとしています.初めはどうということのない実験データだと思っていても,データを徹底的に吟味しメカニズムを考え抜いていくと,新しい現象や機能の発見につながり,インパクトの高い研究へ発展します.皆さんも研究テーマに積極的に取り組むと,研究のセンスが磨かれ成長することができます.センスを身につけて,ぜひ研究開発の「目利き」になって企業で活躍いただきたいと思います.
VW ― Vision & Work hard
この2文字のアルファベットは,成功を得るために必要な要素,Vision(ビジョン)とWork hard(ハードワーク)の頭文字です.iPS細胞を開発しノーベル賞を受賞した山中伸弥・京都大学教授が,しばしばお話されているので聞いたことがある人も多いと思います.元は先生がアメリカの研究所に留学していたときに,ボスの教授から「おまえは一生懸命研究している.でも,いったい何のために研究しているんだ?」のような問いをかけられ,教えられた言葉だそうです.研究において成功するためには,ただ闇雲に働くだけでは不十分で,一体何のために研究するのか,ビジョンを持つことが絶対に必要だ,という意味です.2つの要素は車の両輪と同じで,ビジョンを持っているだけでなく,ハードワークがなければ前進できない,とも言えます.
研究室に配属されたら,皆さんの研究テーマがVisionとなります.Visionと皆さんの自律的なWork hardが,実りある研究を成し遂げるために大切です.自律的な努力は学生諸君自身の成長にもつながると思います.
不易流行
この四文字熟語は,かの松尾芭蕉が提唱したものだそうです.「不易」とは,自然の基本法則です.また,今の学問の流れを知って次の問題を見極める.これが「流行」です.不易と流行,この両方が大切だと芭蕉は言っているのです.東京大学で素粒子物理学を研究されている大栗先生は,「いつまでも変わらないもののなかに新しい変化を取り入れる」ことをあらわすこの言葉に,科学研究の本質があると述べています.「流行を追った研究」というと,ネガティブな意味で使われることが多いかもしれません.しかし流行の研究テーマとは,実は科学研究の進歩をもたらすものなのだと気づかされます.余談ですが,研究費が流行の研究テーマに集中投下されるのは,ある程度理にかなった事なのかもしれません.「不易」とは,専門分野における伝統的な研究対象や方法論,と言い換えることもできそうです.大栗先生は,「研究の現状を理解し,学問を大きく進歩させるポイントは何か,見極めることが大切」とも述べています.私は化学の研究に携わるようになってからずいぶんと年数が経ちましたが,これまで学会や論文の潮流の変遷も見てきました.これまでに流行の研究はいくつも出現しましたし,この先も新しい流行は生まれ続けていくのであろうと感じます.