研究紹介 under construction!  Updated at 01.Mar.2024  Copyright (c) Since 2023 N. Sawaguchi All Rights Reserved.  

   材料設計解析学研究室
 材料の中で、セラミックスを中心に研究をしています。
 セラミックスと金属は互いに関連が深く、基礎学問となっている分野は共通しています。
 セラミックスも金属も、さまざまな用途で活躍している材料です。
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セラミックスについて知りたい場合はこちらをどうぞ
 『セラミックス博物館』 日本セラミックス協会 運営
 
 (随時更新していきます) 
    セラミックスは、産業を支えている代表的な材料の1つです。
 当研究室では、様々な機能をもったセラミックス材料の開発や、
 その機能の向上、機能発現の機構解明を目的として研究を進めています。

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例えば”碍子”をご存じですか(読めますか)?
「がいし」です。これがないと、送電できません...。調べてみて下さい。 
  https://www.ngk.co.jp
  https://www.koransha.co.jp/news/2018/10/1027nhk.html
 ※ 当研究で、碍子の研究を行っているわけではありません。
   一般に、目的に適った新しいセラミックス材料の開発(探索)は、

 『
機能が高いと予想される材料を作製してみて、機能を測定・評価する。』

ことを繰り返して進めるのが一般的です。しかし、このやり方はどのような材料の「機能が優れているか」を予想するために多くの知識を必要とします。また、実際に作製し機能測定をしてみると、予想が外れている場合の方が多いのです。よって、材料開発には労力もコストもかかるというのが常識です。
 我々は、実際に材料を作製する前に、コンピュータシミュレーションを用いてその材料の機能の優劣が予測できる技術を開発しようとしています。この技術によって、少しでも材料開発を容易にし、コストを削減しよう、というのが狙いです。

 この仕事にはソフトウェアの開発が必要ですが、卒研生がいきなりソフトウェアの開発をやることはありません。なぜなら、材料がどういうものかを知らずに、有意義なソフトウェアの開発はできないからです。
 実際に学生諸君と行っている研究では、既に完成しているソフトウェアを用いて、具体的な材料のシミュレーションを実施・解析する ことを中心に行い、シミュレーションを材料の評価にどう活かせるかを考えています。

この他に、必要に応じて実際に材料を作製し評価することもあります。

* 予想がちょいちょい当たるのならば、世の中はもっともっと進歩しているはずです。
* 一方、”既に完成しているソフトウェア”でできることには限りがあります。
   当研究室は、メインのシミュレーション(分子動力学法)ソフトウェアの作者と協力して
   ソフトウェアの改良も進めてきました。最近は、ソフトウェア内部の改良も手がける
   研究室は減少しているようです(市販のソフトウェアを用いる方が楽なので)。
   そのため、ソフトウェアの開発も手がける点は、(いつの間にか)当研究室の
   特徴の1つになっていると思われます。
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YSZ結晶2つ(上下が異なる結晶粒子)が斜めに接合した
(=粒界という)近傍でのイオンの運動の軌跡を描いた図。
 青: 酸化物イオン、 O2-
 緑: ジルコニウムイオン、 Zr4+
 赤: イットリウムイオン、 Y3+
YSZ結晶は酸化物イオン伝導体として知られている。
しかし、この結果では、粒界近傍のジルコニウムイオンやイットリウムイオンが少し活動的になっていることがわかる。


  具体的な研究対象
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酸化物イオン伝導セラミックス   
YSZ結晶中を酸化物イオンが移動している様子。

 YSZ結晶の構造(ZrO2)。
   酸化物イオン伝導体とは、酸化物イオン(O2-)を通す物質のことで、高温で利用可能なセラミックスのものは、
  • 酸素センサ (自動車や溶鉱炉で使われている)
  • 燃料電池の電極材料 (車載が検討されている)
 などの用途に使われています。実用化されている材料ですが、例えば車載の酸素センサの動作温度をより低くしたい*1場合に、その条件に適合する新しい材料が求められています。

 我々は分子動力学法を用いて酸化物イオン伝導体中のイオンの挙動を解析しています。また、粒界がイオン伝導に及ぼす影響も分子シミュレーションで解析できないか、検討しています。


*1 自動車のエンジンが 500℃などの高温になるので、そのような温度でイオン伝導が生じます。
  もし、より低温でも酸化物イオンが移動するなら、用途が広がります。

 よもやま話
  これからの時代、燃焼エンジン車は販売されなくなり、全て電気自動車になるのでしょうか?
  もし、そうなったとしても、酸化物イオン電導セラミックスの用途は車載用酸素センサから
  全固体型燃料電池中に使われる酸素極材へと変わりこそすれ、無くなることはなさそうです。
  ただし、酸化物イオンがもっと低い温度(究極は室温前後)でよく動ける材料が欲しいですね。
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リチウムイオン2次電池の電極材料 、セパレータ  
   リチウムイオン2次電池は、携帯電話や携帯ゲーム機、ノートPCなどの電源として広く利用されています。しかし、もっと長持ちで、もっと軽くて、もっと安全性の高い電池を求めて、技術開発が止まることがありません。我々も、現在利用されている電極材料よりも性能の良い材料の候補について、分子動力学法を用いた研究を進めています。 
  1. 正極材料: Liイオンを含み、電圧の印加に伴ってLiイオンが脱離・挿入可能な物質。機能材料学研究室では、新しい正極材料の開発を進めており、Liイオンが結晶中のどこを通過するかなどの原子レベルの情報を得ようとする目的で分子動力学法も利用して研究している。

  2. セパレータ: 正極と負極の間には、Liイオンだけを通過させることができる”セパレータ”材料が必要である。どのような材料がLiイオンを通しやすいか、分子動力学法を用いて調べている。
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 3  酸化物ガラスの構造と物性  
   酸化物ガラスは、窓ガラスや食器にも使われている親しみある材料です。しかし、ガラスの原子レベルの構造(以降:ガラスの構造と称す)は結晶とは違って、未だに完全には明らかになっていません。また、ガラスの構造は組成や製造条件などによって変化することが知られていますが、因果関係は十分に明らかではありません。そこで、ガラスの製造条件などからガラスの構造や特性を予測する技術があれば、より優れた機能を呈するガラスを創り出し易くなり、有意義だと考えられます。

 一方、原子力発電所から排出される高レベル放射性廃棄物の処理にも酸化物ガラスが使われており(ガラス固化体)、安全確保のために、このガラスの物性を正確に把握することが求められています*1。これは、「できたらいいね」ではなく、確実性を要求される*2タイプの研究です*3
 当研究室では、分子動力学シミュレーションを用いて、酸化物ガラスの研究を進めています。また、XRDやNMRを用いたガラスの構造解析も行っています。


 現在は、
  ホウ酸塩ガラス、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス
 などを対象に、”現実的な”ガラス構造に近い結果が得られるよう、分子動力学シミュレーションの改良に取り組んでおり、一定の成果を得ています。しかし、もっと本物のガラスに近い特徴を再現したバーチャルガラスが得られるように、改良を継続中です。
また、ガラスの電子構造を調べることで、より実際的な解析ができないか、挑戦中です。


さらに、酸化物ガラスと水が接触した界面において、原子レベルで生じる現象にも興味を持ち、研究を進めています。
  1. この目的にガラスが優れていることや、具体的なガラスの成分も知られており、利用方法なども既に決定している部分が多くあります。しかし、安全保障とは、「これで十分」という見切りが困難であり、寧ろ常に最先端の技術を駆使して安全性を高めることこそやるべきことでしょう。
     そこで、量子化学の知識も動員して、ガラス固化体の寿命をこれまで以上に正確に見極め、さらなる長寿命化の方法を探ることが、この研究の目的となっています。
     
  2. 実世界に”確実”なことはほとんどないので、”確実性を極める”という意味合いです。
        参考文献: 『科学は不確かだ!』 R. P. ファインマン 著、大貫 昌子 訳、
                  岩波現代文庫 (2007).
     
  3. 2011年3月11日に発生した東日本大地震により、福島の原子力発電所が大変なことになりました。
     今後の原子力発電の要/不要の議論が必要ですが、少なくとも、この研究の重要性は失われないでしょう。なぜなら、今後必要となる原子炉の廃炉に伴い、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が大量に生じることになります。よって安全な廃棄方法の調査研究・実現は必ず必要になるはずです。
     なお、当研究室では放射性物質を扱える施設もありませんし、研究内容的にも放射性物質を実際に扱うことは一切していません
  4  2015年1月に発表された論文の、「ガラスには秩序構造が存在するようだ」
    という内容に対する各方面の驚きの反応が話題になりました。
      A.J.Dunleavy et al., "Mutual infomation reveals multiple structural
      relaxation mechanisms in a model glass former",
      Nature Comm.unications, (ref. 1とする)
        
    著者らは物理学として、秩序構造を有する結晶性物質とガラスの相違の解明に興味を
    持たれています。このような目的の場合、ガラス化する”物質”として、
    シンプルな構造(あるいは、なるべく少ない設定条件)のものを研究するのが
    一般的です。
    物理学からのアプローチでは、実在ガラスの複雑さを取り除いた後に残る
    本質的な部分をあぶり出そうとするわけです。
     「これこそが”ガラス”の本質だ」と。
    そして、とても簡単にいうと、「ガラスの中に構造の秩序が有りそうだ」
     と報告したわけです。

    一方、当研究室は窓ガラスやコップになるお馴染みの”ガラス”に取り組んでいるので、
    この研究で扱われた”モデルガラス”とは、かなりかけ離れた物質と考えます。
    通説では、「ガラス = 急冷液体」と考えられています。
    液体は空間的な(長距離)周期構造を示さないので、これになぞらえて、
    ガラスの構造は液体と同様に、
      「原子が規則をもって並んだり、集まったりはしていない」
    と考えています。

    当時、インターネットでこの件が興味を持って取り上げられているのは、
    「ガラス = 固体」が一般の人々の常識なのに、
    専門家は「ガラスは液体だ」と説明していることが、一般の人にも伝わったからです。
    幾つかの記事は、上に述べた研究の背景を正しく理解しないままに
    書かれており、とんちんかんな記述が見受けられました。

    このエピソードは、「ガラスの構造はまだよく分かってない」と言うことではないか。
    ガラスの微結晶説というのもあり、未だにこちらの論文も発表されることがあります。
     2014年に日本から出た論文に、またまたややこしい説が出ています。
    「ある物質をガラスにしようとして、一端温度を上げて液体にした状態で、
     液体を構成している原子の間に何らかの秩序がある場合に、それを冷やすと
     ガラスになり、無秩序だとガラスにならない」ということのようです(ref.2)。
     これは、そうとうややこしい。これ以上はコメントできませんが。
     かくの如く、ガラスはよく分かっていない、ということは言えるのではないかと。
     ガラス研究への若手の参加に期待する次第です。

     以上で取り上げた論文は、PDFをダウンロードできました(2015.Feb.4現在)。
     お試し下さい。どちらの論文も計算機シミュレーションを利用しています。
         ref.1     ref.2

   5 2023年2月に、東京大学のグループの研究が報道された。
     それによると、準安定状態(=非平衡状態)ガラスの原子構造を
     あっという間に予測する深層学習の方法を開発したということである。
      https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0310_00042.html
      https://www.deepmind.com/blog/towards-understanding-glasses-with-graph-neural-networks
     長時間かかるシミュレーションの結果を、深層学習の手法で簡便に予測できてしまう
     というのだが、酸化物ガラスの構造解析にはまだ不十分ではないかと思われる。
     著者らは情報科学の専門家のようで、物理的な非平衡状態の予測を目的としている
     と思われる。現実の酸化物ガラスは多成分で構成されており、構成元素とその混合比を
     変えると(+熱処理過程も重要)、材料特性が変化する複雑なものなので、
     どの程度合致する知見が得られるものなのか...。
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・電子状態計算ソフトウェア Gaussian09 を所有しています。
・希土類材料研究センターが導入した
 電子状態計算ソフトウェア Material Studio を管理しています。








※ 2022年は国連が定めた「国際ガラス年」でした。
    詳しくは IYOG
      





 酸化物ガラスの原子構造を実験的に解析する方法が幾つかあります。
 1. X線散乱
    当研究室でも測定しています。
    本当は、放射光施設で強力なX線を使うのが理想です。
 2. 中性子散乱
    特殊な施設へ赴かないと使えません。当研究室は
     残念ながら研究実績をもっていません。
    当研究室がメインターゲットとしているガラスの構成元素は
    ホウ素、シリコン、酸素のような軽元素ばかりなので、
    X線散乱よりも中性子散乱を用いる方が、構造のことが
    よくわかるはずです。(これが分かるためには、
     X線の原子散乱因子について知る必要がある。)
 3. 赤外吸収スペクトル、ラマン散乱スペクトル
     昔から用いられている。”分子”構造に由来する特有の
    振動が特定の波長の光を吸収することを利用します。
    ただし、一般的には得られたスペクトルを既知の物質の
    スペクトルと”絵合わせ”して考察するので、ちょっと
    歯がゆい解析になる。我々は量子計算でもっと理論的に
    スペクトルを解析する方法の構築に興味があります。
    何方か、チャレンジしませんか?
 4. 核磁気共鳴(NMR)
    現代において、最重要な機器分析かもしれない。
    理論は難しい。大変微弱なシグナルを強力な磁石の磁場
    で解像度を高めて、さまざまな工夫を凝らして、スペクトル
    として得る。得られる情報が豊富である。
     人体に用いる場合はMRIという装置名になる。
    当研究室は、過去にNMRの実験を共同研究で行って
    います。今後も研究に用いたいと思っています。
 5. XAFS X線吸収局所構造解析
    X線が物質を透過するときに、ほんの少し”さざなみ”が立つ。
    この”さざなみ”には、X線を吸収した原子の周囲にa)幾つ、
    b)どれくらい離れて、他の原子が存在したかの情報が
    含まれている。したがって、この”さざなみ”を理論式に
    沿って解析すると、酸化物ガラス中に存在する原子の
    配位数と結合距離の情報が得られる。
    特徴
     1) 結晶性は必要ではない原理に基づくため、
        非晶質にも用いることができる。
     2) さらに元素ごとにX線の吸収波長(吸収端)が異なる
        ため、特定の元素の局所構造を解析できる。

    ※ 博士課程でXAFSを用いたガラスの研究を行っていました。
      https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902176586565748
    ※ 清水川氏との共著論文
    

  
  
    かご状物質スクッテルダイトの分子動力学シミュレーション  
    スクッテルダイト結晶は、プニクトゲン元素が骨格となったかご(cage、比較的広い空間を原子が取り囲んでいる)状構造をしています。このかごの内部へ希土類元素が入った場合を「充填スクッテルダイト」と呼びます。

 室工大の電気電子工学コースの関根教授の研究グループが高圧合成の手法で多くの新奇スクッテルダイトを合成しています。当研究グループは関根研究室と充填スクッテルダイト化合物の物性に関する共同研究を進めています。

 スクッテルダイトは導電性を有します。充填スクッテルダイトは、充填原子の熱振動が、かごを構成する原子の熱振動、すなわちスクッテルダイトの格子振動と必ずしも連動する必要が無いはずと考えられています。この状態を、乳児の玩具”がらがら”に見立て(がらがらの器と玉がそれぞれスクッテルダイトのかごと充填原子に対応)、充填原子の振動は”ラットリング rattling 運動”と呼ばれています。

 もし、ラットリングが本当に生じると、充填スクッテルダイトは導電性を有しながら且つ熱伝導が低い物質になる可能性があります(正確には、非充填スクッテルダイトの導電性を低下させることなく、原子充填によって、熱伝導だけを低下させられる可能性がある)。これは、熱電材料(温度差から電気を生み出す、電圧をかけて熱を移動させる材料)として有望であることから、研究が盛んに行われています。

 しかし、本当にラットリング運動が生じているのか?など詳細は今ひとつ明らかになっていません。そこで、分子動力学法を用いて原子の運動を解析し、充填スクッテルダイトの実態の解明に貢献しようとしています。

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上: スクッテルダイト結晶の構造
   非充填型(a)と充填型(b)
下: 熱振動した原子の軌跡



    リサイクル研究  
  1) 製鉄会社が 鉄鉱石とコークス、石灰石を用いて、製鉄を行うと、鉄鋼の他に、
   スラグ(slag)と呼ばれる尽く生成物が生じます。スラグは、セメントの原材料
   などに利用されていますが、大量に生産されるために、製鉄会社はもっと用途を
   拡大したいと考えています。
2) 液晶テレビ、液晶ディスプレイが普及する前は、テレビもディスプレイも
   ブラウン管(CRT cathode-ray tube)を使っていました。そしてブラウン管は現在、
   大量に廃棄されています。ブラウン管はガラスでできています。ブラウン管は
   電子銃を照射する際に放射線も放つので、それを遮蔽するためにブラウン管の
   ガラスには鉛(Pb, lead) を含ませてあります。鉛は人体への毒性を示すので、
   管理が求められていますが、画像を映し出す前面のガラス(パネルガラス)は、
   鮮やかな呈色が必要なため、鉛を入れないようになっています。
   (鉛がPb2+イオンでガラス中に入ると、ガラスは黄色くなってしまうので。)
   本研究は、スラグとCRTパネルガラスを併せて、
   新たなセラミックス材料ができないかを検討するのが目的です。
   すでに、建材用タイルとして十分な強度の試作品の作製に成功しています。
   現在、実用材料に繋がるよう、更なる研究を進めています。
    2021年度は、タイルに青く着色することに成功しました。

3) 自動車窓ガラスのリサイクル
   小樽のガラス工房 - 石狩の産業廃棄物リサイクル会社 - 北海道立総合研究機構
   の共同研究に参加しています。
    廃自動車ガラスとスラグを原料とした建材用タイルの試作をはじめました。
    CRTパネルガラスを原料としたタイルと同様に、タイル形状の試料が得られ、
    JIS規格を満たす強度も得られました。

     深川硝子工芸
     株式会社マテック
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 ← 焼成温度(1時間)
試作タイルの例。

SEM(走査電子顕微鏡)像 左ほど廃ガラス混合比が多い。



 6   ソフトウェア  
    研究に用いるソフトウェアを3つに分類しよう。
 1) 市販のソフトウェア
    文章作成 ...おおむね Microsoft Office Word
    表計算  ...おおむね Microsoft Office Excel
    プレゼン資料作成 ...  Microsoft Office PowerPoint
    作図   ...  Excelが多いが、 カレイダグラフのライセンスを所有
               その他に MicroAVSを利用している。
    ソフトウェア開発 ... Intel Visual Fortran を利用。
 2) フリーウェア
    シミュレーションの結果を3D表示するには、 Vesta を利用。
    分子動力学計算 ... mxdorto / mxdtricl を利用。
    結果の解析    ... Fortran, Basic, Python などでこれまでに開発したツールがある。
 3) 自主開発
    「ないものはつくる」しかないので、志ある諸君はプログラミングを学んで自主制作している。
    教員もサポートすることがある。
    近年は、学生、院生諸君は Pythonで解析ソフトウェアを作成することが多くなっている。
    機械学習に取り組んだ例もある。よって先輩から学べるチャンスがある。
   
 
     
 用語の解説  
 1) 分子動力学法 (Molecular Dynamics (MD) method)   
    分子シミュレーションの1手法。原子や分子、イオンを単位粒子とし、それらの集合体の性質を
  シミュレーションする。単位粒子間に作用する力からそれぞれの粒子の速度を求め、
  それに従って微少時間刻み後の座標を計算する。これを繰り返すことで粒子の凝集体の
  マクロな物性や、ここの粒子の挙動を解析する。
 
 2) 分子シミュレーション (Molecular simulation)   
 
  • 物質とはどのようなものか ― 我々人間を含めて、それぞれの物質について知ろうとする探求心が科学の原動力であり続けています。
  • ナノテクノロジーという用語が重要になったのは、”もの”の研究で扱われる対象が、物体から物質へ、物質から原子・分子・イオンへと進み、ナノメートルという極小な領域を対象とした研究が主流になってきたことの反映です。
  • 現在、ナノテクノロジーの分野では次々と知識が蓄えられ、専用の技術も沢山生み出されていますが、ナノメートルの世界で生じていることを人間が直接見ることが可能になったわけではありません(それは原理的に不可能です)。しかし、電子顕微鏡などの装置や技術を駆使して、ナノレベルの世界を間接的に”見る”ことを可能にしてきたことで、今日のナノテクノロジーの発展があるのだと考えられます。
  • 分子シミュレーションはナノレベルの”実態”を”見る”方法とは異なり、コンピュータを用いてナノレベルの世界で生じる現象を”見る”ことを目的とした研究手法です。原子と原子の間には引力や斥力が作用していると考えられます。それを数式で表現して、その値を計算すれば、物質中を構成している原子の集団がどのように振る舞っているかをシミュレートできるようになります。原子の集団の振る舞いから、物質の性質も導けるようになるはずです。
  • 分子シミュレーションが有用と考えられる問題として、物質についての理論の確認、実験結果の解析の補助、材料の特性の予測などが挙げられます。
  • 分子シミュレーションは 1945 年頃から始まったとされており、まだ発展途上にある技術です。
 
 3)  分子シミュレーションの簡単な説明  
  概観
 原子・分子の集合体の現象や物性を計算機シミュレーションによって解明する手法を
 分子シミュレーションと総称する。
 理論的研究と実験による研究に加わる新たなカテゴリとして捉えられている。

対象
 空間スケールとしては、ナノ空間(10-10 m)〜マイクロ(10-6 m)程度までを扱う。
 時間スケールとしては、フェムト秒(10-15 second)〜ナノ秒(10-9 second)程度を扱う。
 状態としては気体、液体、固体、超臨界状態、ガラス状態、液晶などが研究対象である。 
 物質は水、金属、有機化合物、たんぱく質、セラミックス、高分子化合物、など多様である。
 研究対象の物性も多様で、構造解析、相転移、破壊、安定性(最適構造)、時間変化、
 拡散、熱伝導、凝集、核生成 などなど。

主な手法
 分子動力学法    原子・分子の挙動の時間経過を運動方程式に従って計算する手法。
 モンテカルロ法   乱数を利用して原子・分子の最適配置を計算する手法。
 分子力場法     分子内の原子の(エネルギー的)最適配置を計算する手法。

関連する重要な知識
 量子化学  統計熱力学  力学  熱力学
 ※ 卒業研究と修士の研究を通じて、これらを勉強し直す(使えるようになる)ことができる?
 
 4) 酸化物イオン   
    「酸素イオンではないのか?」とよく質問されます。
 これは、IUPAC (国際純正・応用化学連合 / 化学に関する国際的な取り決めを行っている組織 : 
 http://www.iupac.org/ )で決めている化学物質の命名法に従っています。
 簡単に説明すると、
  酸素イオン:   正のイオンもマイナスのイオンも含めた名称 (oxygen ion)
  酸化物イオン:  負のイオン(O2-) (oxide ion)

 関連して、
  酸化物 (oxide) ・・・  酸化亜鉛は zinc oxide
  硫化物 (sulfide)    sulfide ion とは、一般的には S2- のこと。
  塩化物 (chloride)   chloride ionとは、一般的には Cl-  のこと。
参考文献
『無機化学命名法 -IUPAC 2005年勧告-』
日本化学会 化合物命名法委員会 訳著
東京化学同人(2010) p.62-64, IR- 5.3.3.
その他   
  直接、間接にお手伝いした、分子動力学法の展示  (※ 大学外へのリンクです)
 1) 高知大学 赤松先生のウェブサイト
 2) 国立科学博物館 (東京:上野)の分子シミュレーション展示 ← 上の赤松先生のサイトから
      今は展示されていません。