開講学期 | 2010年度 前期 |
授業区分 | 週間授業 |
対象学科 | 全学科 |
対象学年 | 1 |
必修・選択 | 選択 |
授業方法 | 講義 |
授業科目名 | 日本の憲法 |
単位数 | 2 |
担当教員 | 奥野恒久 |
教員室番号 | Q−606 |
連絡先(Tel) | 0143−46−5821 |
連絡先(E-mail) | okuno@mmm.muroran-it.ac.jp |
オフィスアワー | 月曜日12 時〜13 時、木曜日12 時〜13 時 |
授業のねらい |
「規制緩和」「民営化」の大合唱は過ぎ去ったかに見えます。そして「派遣切り」などで生きていくこと自体が困難な社会になりつつある現在の日本では、働き方や教育・福祉、そして平和のあり方も揺れ動いています。2009年には、裁判員制度もはじまり私たちが「裁判をする側」になりうるのです。また、昨年はいわゆる「政権交代」もありました。あらゆることが大きく揺れ動くなか、この国は今、どのような方向に向かっているのでしょうか。国家の根本法である憲法との関係でいえば、自衛隊の海外「派遣」などが問題になっていますし、引きつづき改憲論もくすぶっています。市有地を神社に提供したことが憲法に違反する、とした最高裁判決も出ています。 では、私たちはこれらの問題にどう向き合えばいいのでしょうか。本講義では、そのための前提作業として、日本国憲法の発するメッセージについて、歴史的に培われてきた憲法理論、裁判所による判例、専門の研究者による学説、さらには人々の運動や意識などを参照しながら考えていきます。 |
到達度目標 |
1.憲法とはどのような法で、立憲主義とはどのような考え方かを理解する。 2.近代から現代への歴史発展のなかで、憲法というものがどのように変遷していったかを理解する。 3.基本的な理論や学説・判例を知る。 4.たとえば、集団的自衛権や裁判員制度など、憲法にかかわる問題について考え、自分の主張ができるよう になる。 5.現在の日本社会のありようについて考える。 |
授業計画 |
総授業時間 45分/60分×2×16=24時間 1.はじめに なぜ、工業大学で憲法を学ぶのか?、講義の進め方と評価、日本国憲法の構造 2.憲法と立憲主義 近代立憲主義、自由主義と民主主義 pp.1-10 3.日本の裁判制度と違憲審査制 三審制、付随的審査制と抽象的審査制 pp.146-158 4.日本国憲法の制定過程 明治憲法と日本国憲法、「押し付け憲法」論 pp.10-13 5.人権尊重主義と人権の限界 人権の分類、新しい権利、公共の福祉 pp.26-44 6.法の下の平等 平等をめぐる歴史、立法目的と目的達成の手段、尊属殺重罰規定違憲判決 pp.45-52 7.身体の自由と刑事手続 罪刑法定主義、無罪の推定、裁判員制度 pp.79-87 8.信教の自由と政教分離 目的効果基準、津地鎮祭訴訟、靖国問題 pp.53-59 9.表現の自由 表現の自由とプライバシー、二重の基準論 pp.61-70 10.経済的自由 経済的自由をめぐる歴史、小売市場事件、積極・消極二分論 pp.70-78 11.生存権 自由権と社会権、生存権の法的性格、朝日訴訟 pp.102-108 12.日本の平和政策の変遷 警察予備隊から自衛隊の海外「派遣」、国連憲章 pp.173-176 13.日本国憲法の平和主義 平和的生存権、9条をめぐる学説と判例 pp.166-173 14.国民主権と選挙をめぐる諸問題 ナシオン主権とプープル主権、選挙制度 pp.122-129,137-141 15.補足とまとめ 16.定期試験 |
教科書 |
平野武、片山智彦、奥野恒久『増補版・基礎コース憲法』(晃洋書房、2008年)、2200円。 初回の授業出席者に『サブテキスト・日本の憲法』を配布します。教科書とサブテキストを毎回使用します。 その他資料は必要に応じて配布いたします。欠席した人用に、奥野研究室前の棚に残った資料を2週間程度置いておきますので、欠席した人は各自取りに来てください。教科書にも付いていますが、日本国憲法の条文はいつでも見れるようにしておいてください。 |
参考書 |
民主主義科学者協会法律部会編 法律時報増刊『改憲・改革と法』(日本評論社、2008年)、3900円 ♯ 浦部法穂『憲法学教室・全訂第2版』(日本評論社、2006年)、3700円 ♯ 辻村みよ子『憲法・第2版』(日本評論社、2004年)、3800円 ♯ 芦部信喜・高橋和之穂訂『憲法・第4版』(岩波書店、2007年)、3000円 ♯ 憲法研究所・上田勝美編『日本国憲法のすすめ』(法律文化社、2003年)、2400円 ♯ 澤野義一、井端正幸、元山健、出原政雄編『総批判改憲論』(法律文化社、2005年) ♯ |
教科書・参考書に関する備考 | |
成績評価方法 | 学期末試験(80点)、数回行う授業中のものを含むレポート(20点)。100点満点とし、60点以上を合格とします。方針を変更するときは、事前に連絡します。 |
履修上の注意 | 再試や追試は行いません。したがって、不合格者は再履修をしてもらうことになります。病気など、やむにやまれぬ事情のある場合は、試験日の前日までに連絡をください。個別に対応します。 |
教員メッセージ |
担当者は、講義に全力投球することを約束します。どうか、受講生の皆さんも、この講義で何かを得たい、という意欲を持って前向きに参加してください。 担当者は月に一度、室蘭市民と「憲法を学ぶ会」、学生と「室蘭工大・憲法研究会」を開いて一緒に勉強しています。関心のある人は、ご一報ください。 |
学習・教育目標との対応 |
情報電子工学系学科の 電気電子工学コース・情報通信システム工学コース 「H 電気電子工学分野の技術が社会や環境に与える影響を考える能力を習得する.」 に付随的に関与する. 情報システム学コース,コンピュータ知能学コース 人の [自己啓発]自己を啓発して学習する習慣を身につける。 [社会的視点]社会的・国際的視点に立って考える能力を身につける. に関与する. JABEE基準 (a)地球的視点から多面的に物事を考える能力 (b)技術者が社会に対して負っている責任に関する理解 |
関連科目 | 平和と憲法、現代民主主義論、基本的人権論、地方自治論、ゼミナール「市民と公共」 |
備考 | 社会が苦手だったという人も、一緒に勉強しましょう。これを機会に、「憲法についても語れるようになりたい」という人に、是非履修してもらいたいものです。質問などある人は、気軽に研究室を訪ねてください。 |