開講学期 2009年度 後期
授業区分 週間授業
対象学科 全学科
対象学年 2
必修・選択 選択
授業方法 講義を基本としつつも、グループ発表など受講生の積極的な参加で、授業を作って行きたく思います。
授業科目名 平和と憲法 (建設・機械・情報)
単位数 2
担当教員 奥野恒久
教員室番号 Q−606
連絡先(Tel) 0143−46−5821
連絡先(E-mail) okuno@mmm.muroran-it.ac.jp
オフィスアワー 火曜日:11時30分〜12時30分
水曜日:16時〜17時
   会議等が入ることがありますので、メールか電話で事前に連絡いただけると助かります。
授業のねらい  アメリカで昨年ブッシュ大統領から代わったオバマ大統領は、今年の4月に「核なき世界を目指す」宣言をするなど、平和への新たな展望が見えたかにも思えます。しかし、アフガニスタンをはじめ世界では「テロ」を含む紛争が絶えないのも事実です。日本の自衛隊は、現在、インド洋やソマリア沖でも活動しています。徹底した非軍事平和主義を掲げる日本国憲法のもと、私たちはこの現実とどのように向き合っていけばいいのでしょうか。そもそも平和とは、戦争のない状態だけを指すのでしょうか。
 本講義では、「平和」について憲法学の観点から考えて行きますが、同時に戦後の歴史も振り返ります。そのうえで、いま私たちの「立っている位置」を確認し、問題があるのであればそれを克服する憲法理論を検討しつつ平和について議論をしていきます。講義全体を通じて、受講生の皆さんに考えていただきたいことは、「非軍事平和主義に可能性はあるのだろうか」「裁判所の違憲審査権はいかなる役割を果たすべきだろうか」という大きな二つの問題です。
到達度目標 1.平和をめぐる現状、とりわけ問題点を知る。
2.日本の違憲審査制度の現状と課題について理解する。
3.それら問題を解決するための方途を、憲法理論や裁判例、日本国憲法の解釈を通じて探る。
4.国連の仕組みや国際法、そして戦後史など平和について考える基礎的な知識を得る。
5.「統治行為論」や「付随的審査制」など、憲法学特有の議論や考え方を理解する。
6.議論や問題状況の整理とグループ・ディスカッション等を通じて自らの意見を主張できるようにする。
授業計画 1.はじめに
 講義の進め方と評価について。平和をめぐる最近の動き
2.日本国憲法の平和主義
 非軍事平和主義、平和的生存権
3.憲法をめぐる戦後史T
 憲法9条の誕生、「押し付け憲法」論
4.憲法をめぐる戦後史U
 日本の独立と日米安保体制
5.憲法をめぐる戦後史V
 高度経済成長期の憲法運用
6.憲法をめぐる戦後史W
 安定成長期の日本外交
7.憲法をめぐる戦後史X
 新自由主義と軍事大国化、小選挙区制の導入
8.警察予備隊違憲訴訟と憲法裁判所問題
 違憲審査制度、付随的審査制
9.砂川事件と統治行為論
 裁判所の役割、違憲審査制の意義
10.長沼訴訟と平和的生存権
 平和的生存権の裁判規範性
11.自衛隊イラク派遣違憲訴訟
 被害者にも加害者にもならない権利、平和的生存権の憲法規範性
12.戦争違法化の歴史
 戦時国際法、不戦条約、国連憲章
13.平和を維持する国際機関
 国際連盟と国際連合
14.グループ討論「非軍事平和主義の可能性」
15.まとめと補足
 
教科書 教科書は使いませんが、野中俊彦・江橋崇編『憲法判例集〔第10版〕』(有斐閣新書、2008年)を8回目の講義から必ず持ってきてください。また、『ディリー六法』などコンパクトな六法を持参されることをお勧めします。
参考書 平野武・片山智彦・奥野恒久『増補版・基礎コース憲法』(晃洋書房、2006年) ♯
民主主義科学者協会法律部会編 法律時報増刊号『改憲・改革と法』(日本評論社・2008年) ♯
最上敏樹『いま平和とは』(岩波新書、2006年) ♯
松井芳郎『国際法から世界を見る』(有信堂、2004年) ♯
渡辺治・後藤道夫編『「新しい戦争」の時代と日本』(大月書店、2003年) ♯
田中伸尚『憲法九条の戦後史』(岩波新書、2005年) ♯
豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』(岩波新書、2007年) ♯
中村政則『戦後史』(岩波新書、2005年) ♯
高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書、2005年) ♯
堤未果『ルポ・貧困大国アメリカ』(岩波新書、2008年) ♯
武田晴人『高度成長―シリーズ日本近現代史G』(岩波新書、2008年) ♯
渡辺治『安倍政権論―新自由主義から新保守主義へ』(旬報社、2007年) ♯
西山太吉『沖縄密約―「情報犯罪」と日米同盟』(岩波新書、2007) ♯
前田哲男『自衛隊―変容のゆくえ』(岩波新書、2007) ♯
島本慈子『ルポ・労働と戦争』(岩波新書、2008) ♯
半田滋『「戦地」派遣―変わる自衛隊』(岩波新書、2009) 
教科書・参考書に関する備考
成績評価方法 学期末試験の得点(80点)と、時折課すレポート・小テスト・グループ発表(20点)とで評価し、60点以上を合格とします。方針を変更する場合は事前に連絡いたします。
履修上の注意 追試や再試は行いません。したがって、不合格者は再履修をしてもらうことになります。病気などやむにやまれぬ事情が生じたさいは、学期末試験前日までに連絡をください。個別に対応します。
教員メッセージ  担当者は、講義に全力投球することを約束します。どうか、受講生の皆さんも、この講義で何かを得たいという意欲を持って前向きに参加してください。この授業では、受講生の発言を求めるつもりです。
 担当者は月に一度、室蘭市民と「憲法を学ぶ会」、学生と「室蘭工大・憲法研究会」を開いて、一緒に勉強しています。また、「市民と公共」コースのサブゼミとして、「社会を知るための読書会」を開こうと考えています。関心のある人は、ご一報ください。
学習・教育目標との対応 JABEE基準
(a)地球的視点から多面的に物事を考える能力
(b)技術者が社会に対して負っている責任に関する理解
関連科目 「日本の憲法」を履修していることが望ましい。今後の開講科目は、「市民と公共」コース3年次の「基本的人権論」、4年次の「ゼミナール・市民と公共A」です。
備考 質問などある人は、気軽に研究室を訪ねてください。