開講学期 2008年度 後期
授業区分 週間授業
対象学科 材料物性工学科・応用物理コース
対象学年 2
必修・選択 必修
授業方法 講義
授業科目名 量子論
単位数 2
担当教員 戎 修二
教員室番号 K604
連絡先(Tel) 0143-46-5620
連絡先(E-mail) ebisu@mmm.muroran-it.ac.jp
オフィスアワー 火曜日 13:00-15:00
授業のねらい 物質は原子やその集合体である分子を単位として構成されており、原子・分子中に存在するさらに小さな電子は物質のマクロな物性に重要な影響を与える。これらの小さな粒子の振る舞いを通常の力学(古典力学と呼ぶ)を適用して解釈しようとすると破綻を来し、ミクロな世界でのルールである量子力学が必要となる。量子力学の基礎的事項を扱う本授業「量子論」では、光や電子等の粒子・波動の二重性を理解し、ミクロな粒子の振る舞いをシュレーディンガー波動方程式で記述する方法およびその解法を習得する。
到達度目標 1.量子力学誕生のきっかけとなった現象について理解し、簡単な説明ができる。
2.光や電子等の粒子・波動の二重性、ド・ブローイ波、不確定性原理について理解し、
  関連する物理量の簡単な計算ができる。
3.運動量演算子とハミルトニアンを微分演算子で表し、波動関数に作用させることが
  できる。
4.簡単な系でシュレーディンガー波動方程式を立て、それを解くことができる。
5.量子数で状態を記述することの意味を理解し、実例に適用できる。
授業計画 第1週  シラバスの説明、量子力学に関連する人物・事項の認知度調査
     2週目以降の2行目には教科書の章、キーワード、キーパーソンを記す。
第2週  古典物理学の破綻
     1章;黒体放射、熱容量、光電効果
第3週  量子力学の誕生
     1章;プランク
第4週  光量子説、ボーアの量子仮説、物質波
     1章;アインシュタイン、ボーア、ド・ブローイ
第5週  量子論の考え方、不確定性原理
     2章;ハイゼンベルク
第6週  波動関数の意味、波動方程式の復習
     2章;二重スリット、粒子か?波動か?
第7週  数学的準備、微分演算子、運動量演算子、ハミルトニアン
     2章;ナブラ、ラプラシアン
第8週  シュレーディンガーの波動方程式(1)
     2章;シュレーディンガー、時間を含むシュレーディンガー方程式
第9週  シュレーディンガーの波動方程式(2)
     2章;古典力学との対応、エーレンフェストの定理
第10週  シュレーディンガーの波動方程式(3)
     2章;定常波、固有値、固有関数、時間を含まないシュレーディンガー方程式
第11週  箱の中の自由粒子(1)
     3章;量子化、零点エネルギー、エネルギー準位、励起、縮退
第12週  箱の中の自由粒子(2)
     3章;周期的境界条件、直交性
第13週  調和振動子
     3章;復元力がある簡単な系への適用
第14週  水素原子
     3章;原子構造が最も簡単な水素への適用
第15週  全体の復習
教科書及び教材 小出昭一郎著「量子論(改訂版)」
裳華房 基礎物理学選書2 定価(2625円)
他に必要に応じてプリントを配付する。
参考書 ・小出昭一郎著「量子力学(I)(改訂版)」
 裳華房 基礎物理学選書5A 定価(2835円)
 (図書館に3冊所蔵あり;教科書と相補的な内容)
・P. W. ATKINS著、千原秀昭・中村恒男訳
 「アトキンス物理化学(上)第6版」東京化学同人
 定価(5670円)(図書館に7冊所蔵あり)
・原島鮮著「初等量子力学(改訂版)」裳華房
 定価(3150円)(図書館に5冊所蔵あり)
・都筑卓司著「なっとくする量子力学」講談社
 定価(2835円)(図書館に4冊所蔵あり) 
成績評価方法 数回課すレポートの平均点を25点満点に換算し、定期試験の点数を75点満点に換算し、これらの合計点で評価する。合計点が60点以上のものを合格とする。不合格者には、一度だけ再試験を実施し、上と同様の換算で合計点60点以上を合格とする。再試験不合格者は再履修すること。
履修上の注意 1.教科書の章毎に、文章を通読する形で予習をしておくこと(予習の段階では、数式の
  意味は理解できなくても一向に構わない)。
2.振動・波動論の内容を理解していることが望ましい。
3.緊急の告知は電子掲示板等でおこなう。
4.授業中、授業後の質問は歓迎するので、積極的に質問すること。
5.電子メールでの質問も簡単な内容であれば受け付ける。多少込み入った内容に関して
  質問する場合は、教員室まで来室すること。
教員メッセージ 量子論・量子力学に関連する書籍は数多く出版されています。その内容は、高度な数学を必要とする非常に難解なものから、気軽に読めるものまで幅広く存在し、易しい部類の書籍のタイトルには、「よくわかる」、「やさしい」などの修飾語が目立ちます。これは、量子力学が非常に難しい学問であるという認識が多くの人に持たれていることを表しているのと同時に、重要であるがゆえに、また面白いがゆえに、皆が知りたがっているということの表れでもあると思います。量子力学を真正面から捉えて高度な研究に適用していくことは、確かに難解です。しかし授業で扱う序論の段階では、難しさよりも、不思議さや面白さが勝るということを、感じ取ってもらいたく思います。量子力学は、固体物理学の基礎を成す学問です。諸君が日頃手にする携帯電話をはじめとする種々の電子機器のほとんどは、その動作原理において量子力学的な諸現象を利用しています。知らないところでお世話になっている量子力学の序論を学ぶことは、材料に向き合うときの視野を広げることになると思います。授業と並行して、数ある書籍の中から自分に合ったものを選んで、読んでみることを勧めます。
学習・教育目標との対応 この授業の単位修得は、各コースで次の学習・教育目標およびJABEE基準に対応している。
「応用物理コース」:学習・教育目標の(D):理工学基礎、JABEE基準1(1)の(d)-(1a)。
「材料工学コース」:学習・教育目標の(D):材料工学の専門能力、JABEE基準1(1)の(d)。
関連科目 「応用物理コース」:
履修にあたって、2学年前期開講の必修科目:工業数学、振動波動論、電磁気学および電磁気学演習を履修・理解しておくことが望ましい。
今後の関連科目は、3学年前期開講の量子力学、統計熱力学、固体物理学、応用光学である。
「材料工学コース」:
履修にあたって、2学年前期開講の選択科目:振動波動論を履修しておくことが望ましい。
今後の関連科目は、3学年後期開講の選択科目:磁性、超伝導、レーザー工学、光デバイス、誘電体物理学、半導体物理学、生体機能材料科学である。
備考