1 開講年度 2007
教育課程名 博士前期課程 共通科目
授業科目番号 25
授業科目名 経営科学
開講曜日と時限 金曜1〜2時限
教室番号 N302
開講学期 前期
単位数 2
対象学科・学年 全専攻1年
必修・選択の別 選択
授業方法 講義
担当教員 高井 俊次
教員室番号
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連絡先(E-Mail)
オフィスアワー
授業のねらい 経営の基本的な機能は、事業目的達成に向けて組織の持つ資源を配分し、諸活動を実行、調整、統合していくことにある。工学専攻者向けの講義であることを配慮し出来るだけ多くの具体的事例を取り扱うことにより、経営課題についての理解を深めるとともに、現代社会における企業という社会的制度の持つ意味について考える。
到達度目標 1)経済発展、産業構造の転換という視点の中で企業の持つ意味と課題について理解する 
2)経営学の成立と発展を知り、その基本的な枠組みを理解する
3)様々な企業事例に触れることにより、経営として対処すべき課題について理解を深める。
授業計画 第1・2週  産業構造の転換と企業経営
本講義の序論として、課題と視点の提起を行う。事例としてビール市場における<アサヒvs麒麟vs輸入ビール(=ダイエー)>の争いを取り上げ、醸造業を例に情報産業化の進展と市場構造の関連について考える。

第3週  ティラーの憂鬱と経営学の誕生
「科学的管理の父」と呼ばれるテイラーを取り上げ、彼が<工場管理運動><課業管理>によって何に取り組もうとしたのかについて考える。また、彼が失意の内に生涯を閉じなければならなかった背景に思いを馳せ、そこに経営学の課題が浮かび上がるのを見る。

第4週  フォーディズムとアメリカン・ドリーム、そしてフォードの     落日へ
大量生産、大量消費の第1歩がフォードだったと言ってよい。高嶺の花だった自動車をどうフォードは低価格化したのか、その生産システムを考える。アメリカの消費者にとって、T型フォードの黒は、画一性ではなく、明るいアメリカの<夢の色>だったのである。しかし、やがて、大盛況を誇ったフォードに落日の日がきた。彼らの何が問題だったのか?GMはどうフォードにチャレンジしたのか。<組織構造>の持つ意味を考える。

第5週  人間関係論の発見から管理者論へ、意思決定論へ
フォードとGMの争いは、実に様々な経営学的課題を提供した。中でも「科学的管理」の一環として始まった「人間関係論」は<ホーソン実験>を機に大きく展開する。その発展を辿り、経営者の役割について考える。さらに、経営の主題が<経営者論>から<(組織の)意思決定論>へ移っていく過程に眼を配、組織と環境の関連について考える。

第6週  環境適応と環境創造(経営戦略論1)
ヤマト運輸の宅急便事業を取り上げ、環境適応と環境創造の観点の相違について考える。

第7週  企業はいかに競争するか?(経営戦略論2)
マクドナルド vs モス・バーガーを取り上げ、顧客層の選定、サービスレベルの設定等の事業戦略の諸要素について考え、それらを生み出す競争戦略の基本枠組みについて検討する。併せて、経営改革としての経営戦略の持つ意味を考え組織開発の手法を紹介する。

第8週  事業の再編成と資源配分
競争環境の変化により企業が事業の選択と集中のため経営資源の再配分を強いられることは決して例外的なことではない。そうした資源再配分のための組織改革をどう行うか、東芝、GEを取り上げ考える。

第9週  財務の基礎知識、M&Aは時間を買う
適切な資源配分を考えるのに不可欠な財務の基礎知識について、戦略評価手段としての観点を踏まえて、解説する。SONYによる映画会社買収事例を取り上げる。

第10週  生産の現場と諸機能の連携(トヨタの挑戦)
GM、フォード、クライスラーの三大メーカーにトヨタはどう挑戦したのだろうか?生産ラインだけでなく、開発、営業との連携という観点から、検討する。

第11週  日本的経営の強みと弱み、アメリカの対日戦略
70年代中頃から華々しく世界進出を果たした日本企業の経営スタイルは「日本的経営」として賛美された。その特徴について考えるとともに、アメリカが徹底した日本企業研究の結果生み出したBusiness Process Reengineeringに触れ、その後の日米間の競争について考える。

第12週  マイクロソフトのディファクト・スタンダード戦略
ビル・ゲーツと同世代には多くのパソコン好きの青年がいて、その多くがベンチャーにチャレンジした。何故、マイクロソフトが勝ち残ったか?新しいゲームのルールは、“Winner takes All”。マイクロソフトの冷徹な戦略を追う。

第13週  R/D投資とシャープの目の付けどころ
技術開発と製品開発がうまく結びつき成功する例というのは必ずしも多くない。下位の家電メーカー、シャープが液晶技術で世界のトップに立つまでを振り返り、R/Dのあり方について考える。

第14週  組織文化とナレッジマネジメント
日本企業には「現場に強く、経営に弱い」という評価が向けられることが多い。知識をどう生み出し、伝えるかという観点から日本企業の強みと弱みを考え、本講義の最初のまとめとして、企業の競争の場がどこあるかを再考する。

第15週  ブランド、ガバナンスと企業倫理
ブランドが大きく評価される時代は、また企業倫理が問われる時代でもある。本講義のまとめとして企業と社会の関連について考える。
教科書及び教材 特に指定しない。
授業では事例研究を多く扱う。資料プリントを配布する。
参考書 折りに触れ紹介する。
成績評価方法 レポート作成2回(中間および期末)。各3000字程度。ともに50点満点、計100点満点で評価する。
履修上の注意 MOTコア科目として受講する時は、大学院博士前期課程修了要件として各専攻が定める「共通科目または他専攻の授業科目」に含めることができないので注意すること。
教員からのメッセージ 経営とは極めて人間的な要素の強い領域であり、ミクロ=マクロの接点を扱うので、社会学、経済学のみならず、文化人類学、認識論など幅広い関心を持ち、人間行動への想像力を働かせて授業に臨んでほしい。授業中の積極的な質問や教員室へおいでいただいての議論をおおいに歓迎する。
学習・教育目標との対応 共通科目として受講される方には、技術開発が位置づけられる社会的文脈、文化的文脈への視点を拓いていただくことが大きなレベルでの目標ということになります。
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