科目概要

対象年度
2005
教育課程名
博士前期課程 専攻別科目
授業科目名
システムダイナミックス論
Subject Name
System Dynamics
単位数
2
必修・選択の別
選択
対象学科・学年
情報工学専攻 1年
開講時期
前期
授業方法
講義
担当教員
佐藤一彦


教員室番号
V511
連絡先(Tel)
0143-46-5422
連絡先(E-Mail)
satoh@csse.muroran-it.ac.jp


シラバス

授業のねらい
自然環境や人工物、社会システムなどの動的挙動はこれらの基本構造に深く関わっている。システム・ダイナミックスは多様なシステムに含まれる基本構造を抽出し、それらの挙動と基本構造の関連を理論的に解明することにより、システムの成長を望ましい方向に導く方策を得ようとするシステム科学の一分野である。授業では最初にシステムに含まれる単純な構造とシステムの挙動の関連を整理する。その後、システム・ダイナミックスの応用例として、部品発注のシステム、商品の生産サイクル、市場成長、企業の経営管理、といったインダストリアル・ダイナミックスについて検討する。さらに応用例として、都市や地域の計画を取り扱うアーバン・ダイナミックス、また流行病のライフサイクル、生物集団と資源の相互作用を対象とするバイオ・ダイナミックスについて検討する。
授業の目標
1.システム分析の基礎となるレイト変数、レベル変数、補助変数、定数の抽出、変数間の因果ループの探索、フローダイヤグラムへの変換などに習熟する。
2.システム方程式を記述し、システムの成長や変動に及ぼすパラメータの影響を系統的に調べることが可能なシミュレーション言語を習得し、システムの挙動を分析できるようにする。
3.多変数の非線形システムについてシミュレーションを行い、現実の問題に対するシステム・ダイナミックスの可能性と問題点を把握できるようにする。
授業計画
第1週 システム・ダイナミックスの歴史、
    因果ループ図の作成
第2週 正のフィードバック構造、
    負のフィードバック構造
第3週 S字型の成長構造
    ロジスティック曲線、生物集団の発展、流行病の増加
第4週 指数遅れと平滑化 
    1次指数遅れ、3次指数遅れ、指数平滑化
第5週 周期的変動
    貯水池モデル、多重フィードバック構造とその挙動
第6週 単純構造のまとめと討論
    
第7週 部品発注モデル
    モデル化と定式化、モデルの改良とシステム挙動の解析
第8週 商品生産サイクル・モデル
    基本モデル、構造的追加、応答遅れの解析
第9週 市場成長モデル
    基本モデル、販売増加ループの挙動分析、
    出荷調整ループの挙動分析
第10週 フューチャー・エレクトロニクス社モデル
    企業の経営管理のモデル化、モデルの挙動分析、政策分析
第11週 インダストリアル・ダイナミックスのまとめと討論

第12週 居住コミュニティー・モデル
    人口と住宅の相互作用のモデル化、モデルの挙動の分析と評価
第13週 黄熱モデル
    流行病モデルの改良、モデルの挙動分析
第14週 カイバブ高原モデル
    生物集団・資源モデル、カイバブ高原に生息する鹿の増減
第15週 アーバン・ダイナミックスとバイオ・ダイナミックスの
    まとめと討論

    
教科書及び教材
資料集:システム・ダイナミックス(自作)
    講義で使用する全スライドのコピーを配布します。
参考書
・M.R.Goodman著、蒲生叡輝・山内明・大江秀房訳:
 システム・ダイナミックス・ノート、マグロウヒル好学社、1981年
・島田敏郎編:システムダイナミックス入門、日科技連、1994年
・岡野道治・福田敦・福永吉徳・吉江修:
 理工系システムのモデリング学習、牧野書店、1997年
・森田道也編著:経営システムのモデリング学習、牧野書店、1997年
・小林秀徳:政策研究の動学的展開ーエクセルシステムダイナミックス
 白桃書房、2002年
・R.G.Coyle: System Dynamics Modelling, Chapman & Hall, 1996
・J.D.Sterman: Business Dynamics- Systems Thinking and Modeling
  for a Comlex World, MacGraw-Hill, 2000
 
成績評価方法
レポート、討論への参加状況を総合して評価する。
履修条件等
学部での授業科目「線形システム論」を履修していることが望ましい。
教員からのメッセージ
コンピュータの処理性能の向上によって実験科学の一部や工学的実験の一部はコンピュータ・シミュレーションによって代行されるようになりました。システム・ダイナミックスを一躍有名にしたのはローマクラブの研究レポート「成長の限界」でした。以来、この方法論とシミュレーション言語は適用範囲を広げ、現在ではシステム思考のフレームワークと格好なツールを提供するに至っています。理工系から経営系まで動的な変化を伴う多様な対象を柔軟な方法でモデル化し、その挙動をシミュレートできるシステム・ダイナミックスの世界を体験してみましょう。
その他