授業のねらい |
人間が本来的に持っていたはずの原初的な一体感が聖と俗に分裂・二重化したのは、人類史的には人間が労働の時代に入ってからであり、個人史的には幼年期の終わり、学齢期に達する頃からであるだろう。芸術は、文学も含めて、そうした失われてしまった至福の一体感、到達感を我々に与えてくれる祝祭的異次元空間の一つである、とも考えられる。 この授業では、文学作品を読む醍醐味は非日常的体験の享受にあるという考えを根底に据え、神話からSFまで、国や時代、ジャンルにこだわらずいろいろな作品を扱い、原型←→類型←→個別作品と、融通無碍に話題にしたい。 |
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授業の目標 |
文学作品を広く読み、そこに見られるいくつかの共通のテーマ、パターンを意識化していく。その過程で、日常的な読書を超える視点が得られるはずである。 |
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授業計画 |
1週目:授業概要 2週目:古代神話と民俗説話 3週目:『オイディプス王』――王殺しと近親姦 4週目:フロイトとエディプス・コンプレックスの周辺 5週目:フレイザー『金枝篇』――死と再生 6週目:バタイユ『エロティシズム』――禁忌と侵犯 7週目:『アーサー王』と聖杯探求譚 8週目:アーサー王伝説の周辺 9週目:英雄伝説の行方――義賊と反権力 10週目:『ドン・キホーテ』――騎士と道化師 11週目:実存主義と「権力への意志」 12週目:『源氏物語』――美少女育成 13週目:SFの起源――空間軸から時間軸へ 14週目:未来への悲観と楽観 15週目:授業補遺 |
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教科書及び教材 |
教科書は特にない。毎回、資料プリントを用意する予定。 |
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参考書 |
山内昶著『タブーの謎を解く――食と性の文化学』 (筑摩書房・ちくま新書)(定価660円+税) 大熊昭信著『文学人類学への招待』 (日本放送出版協会・NHKブックス)(定価920円+税) |
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成績評価方法 |
出席率75%以上の者を対象とし、授業の内容に関する4題ぐらい限定の、記述式の試験を行う。評価軸は、新しい見解・情報、授業を踏まえての思考など。単なる資料の暗記では不足。提出された答案の、漢字語句のひらがな表記や誤字脱字の有無、文字・文章表記の丁寧さ・正確さなどの度合いも、当然、評価に関係する。 不合格者には再試験を課すことを考えているが、対象作品を読んでいないことや授業を聞いていないことなどが明らかな、極端な低得点者は評価の対象外にする。 |
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履修条件等 |
講義形式での授業は、受講者の意欲が必須である。他ジャンルの芸術(絵画、彫刻、演劇など)や映画、TVドラマ、アニメ、ゲームなど、周辺ジャンルにも広く関心を持って参加してほしい。 |
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教員からのメッセージ |
各時代の作家、作品、文学概念にできるだけ広く触れ、文学とその周辺ジャンルを享受しようというのが、当初の、そして最終的な目標である。願わくば、授業そのものが非日常的な時空間たらんことを! 最低限、読書案内として、受講者が、授業で触れた作品の中から未読のものを読んでみようという気になってくれれば、良しとしたい。 |
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その他 |
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