授業のねらい |
本授業では、テキスト『ドイツの歴史』を用いながら、特に前近代を中心に、ドイツ史の軌跡をたどる。一般にこれまでの西洋史学においては、如何にしてヨーロッパ諸国が世界でいちはやく強力な近代国家とまとまった国民国家を作り上げたか、という問題が重視されてきた。そのため必然的に強力な中央集権国家とそれを安定させる文化的に均質な国民の形成に価値を見いだし、一方で地方の独立性の高さ、多民族的構成、複数の宗教的信条の混在といった状況を、強力な国家の形成にとって不利な要素と見なす傾向にあった。そのような中で、19世紀初頭まで神聖ローマ帝国という枠組みの中にあったドイツに関しては、他のヨーロッパ諸国にくらべて、中央集権国家や均質な国民国家の形成が不十分であったとされ、このことが近代以降のドイツの歩みにも影を落としているといわれてきた。しかしながら、近年のヨーロッパ連合の歩みに象徴されるように、既存の主権国家体制枠組みを超える超国家的政治共同体の発展は、このような歴史の見方に大きな変更を迫っている。なぜなら、これまでの国家や国民という枠組みを最優先とする視角が相対化され、代わりに国家より大きな政治共同体への統合、また同時に国家より小さな政治共同体の尊重、多様な文化や複数の宗教的信条の共存という観点が重要視されるようになってきたからである。このような現代的状況を踏まえ、本授業に於いては、ドイツを歴史的に特徴づける分権的連邦制という形態での緩やかな国家統合や、カトリックとプロテスタント諸派の宗派併存、地域的文化的多様性の発展といった事柄に注目しつつ、ドイツ史の展開とその特徴を把握することを目指す。 |
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授業の目標 |
上記の課題に取り組むにあたって、特に以下のテーマに関心を払い、認識を深める。
1. ドイツの連邦制的国制構造の史的連続性 2. ドイツ宗教改革の特質 3. ドイツ近代国民国家建設の過程と特徴 |
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授業計画 |
第1週 ガイダンス、教科書序章 第2週 第1章 第3週 第2章 第4週 第3章 第5週 第4章その1 第6週 第4章その2 第7週 第6章 第8週 第7章 第9週 第8章 第10週 第10章 第11週 第11章 第12週 第12章 第13週 第13章 第14週 まとめ 第15週 予備日 |
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教科書及び教材 |
木村靖二 編 『ドイツの歴史』(有斐閣アルマ) 有斐閣 2000年 1800円。 なお、講義内容をまとめたレジュメと参考資料を毎回配布する。 |
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参考書 |
専門的な領域もカバーするものとして、成瀬治 他編『世界歴史体系 ドイツ史』全3巻、山川出版社がある。 |
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成績評価方法 |
定期試験によって判断する。形式は授業中に説明する。100点満点中60点以上を合格とする。やむを得ない事情によって試験を欠席した者に対しては、別途レポートを課す。 |
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履修条件等 |
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教員からのメッセージ |
授業期間が始まるまでに1度教科書を(最後まで)通読し、毎回聴講前に該当部分を再度読んで授業に臨んでください。毎回配布する講義レジュメに、授業を聴いて重要と思われた点を書き込んだりして、自分なりのノートに仕上げ、定期試験に活用してもらえれば良いと思います。 |
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その他 |
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