授業のねらい |
生物の脳を一つの情報処理システムとして眺めると、現在のコンピュータではまだ実現できない能力を数多く持っている。脳の情報処理の計算原理を知ることができれば、次世代の情報処理システムの開発につながる新しい設計原理を手に入れることができる。脳の情報処理のメカニズムはまだ完全に解明されている訳ではないが、近年の研究の進展に伴い新しい知見が続々と集積されてきており、これらに基づいた情報処理システムの開発も進められている。本講義では、生体における情報処理の仕組みについての理解を深め、これを様々な知能情報システムに応用するための知識を養うとともに、画像・音声情報の呈示やユーザインタフェースの開発・評価において重要となる人の知覚特性とこれを測定する心理物理学的手法について学ぶ。 |
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授業の目標 |
1.神経情報処理の基礎となる計算原理について理解を深める。 2.人間の視知覚特性とこれを科学的に測定する心理物理学的手法について理解を深める。 |
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授業計画 |
第1回 生体情報システム概論 第2回 脳の構造と機能地図、神経細胞(ニューロン) 第3回 神経細胞のモデルと結合様式、シナプス結合の強化則 第4回 神経回路網のモデル(ニューラルネットワーク) (1)バックプロパゲーション 第5回 神経回路網のモデル(ニューラルネットワーク) (2)ホップフィールドモデル 第6回 神経回路網のモデル(ニューラルネットワーク) (3)自己組織化マップ 第7回 神経回路網のモデルまとめ 第8回 視覚系の構成 第9回 視覚心理(1)人間の視覚特性 第10回 視覚心理(2)心理物理学的測定法 第11回 初期視覚の計算理論:標準正則化理論 第12回 初期視覚のアルゴリズム 第13回 視覚系まとめ 第14回 高次脳機能の情報処理 第15回 生体情報システムの現状と脳科学の展望 |
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教科書及び教材 |
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参考書 |
・松村道一「ライブラリ脳の世紀1 脳科学への招待」 サイエンス社(1,900円+税) (脳の構造について分かりやすく書かれた入門書です)
・坂和正敏、田中雅博「ニューロコンピューティング入門」 森北出版(2,600円+税) (様々な種類のニューラルネットワークが解説されています)
・川人光男「脳の計算理論」 産業図書(5,500円+税) (運動制御と視覚についての計算論的神経科学の専門書です)
・平井有三「視覚と記憶の情報処理」 培風館(3,500円+税) (脳構造からモデルまで系統的に書かれた教科書です)
・デビッド・マー「ビジョン 視覚の計算理論と脳内表現」 産業図書(4,200円+税) (視覚情報処理の計算理論についての専門書です) |
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成績評価方法 |
・定期試験(50%)と小テスト(50%)の結果によって評価する。
・不合格の場合は再履修すること。 |
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履修条件等 |
履修の必須条件となる科目はないが、講義「視覚情報処理」の内容を習得していると理解しやすい。 |
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教員からのメッセージ |
線形代数やシステム工学、データ構造とアルゴリズムなど、3年生までに履修してきた科目は、情報工学に関わる研究・開発を行う際の基盤となる知識でした。「ロボットシステム」とともに4年時に開講される本講義は、これまでに養ってきた広範な基礎知識がどのように活かされて情報科学の新しい分野が切り開かれるのかを示すものであると同時に、将来研究開発の一線に立つ諸君に、今後様々な応用が見込まれるこの分野に対応できるよう、その基礎知識と現状について理解を深めるものである。本講義では、最新の研究動向の紹介なども交えながら、生物の脳が持つ巧妙な情報処理のメカニズムについて考えていく。 |
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その他 |
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